2017-01-01から1年間の記事一覧

『神の値段』(☆3.4)  著者:一色さゆり

メディアはおろか関係者の前にも一切姿を見せない前衛芸術家・川田無名。 彼は、唯一つながりのあるギャラリー経営者の永井唯子経由で、作品を発表し続けている。 ある日唯子は、無名が1959年に描いたという作品を手の内から出してくる。 来歴などは完全に伏…

『恐怖小説 キリカ』(☆3.8) 著者:澤村伊智

ホラー小説の新人賞を獲得し、僕は出版に向けて準備をはじめた。隣には支えてくれる最愛の妻・キリカ。 順風満帆な日々が続くと思われたが、友人の一人が「作家とは人格破綻者である」「作家は不幸であるべき」と一方的な妄想を僕に押し付け、嫌がらせをはじ…

『アトミック・ボックス』(☆3.8)  著者;池澤夏樹

人生でひとつ間違いをしたという言葉を遺し、父は死んだ。 直後、美汐の前に現れた郵便局員は、警視庁を名乗った。30年にわたる監視。父はかつて、国産原子爆弾製造に携わったのだ。国益を損なう機密資料を託された美汐は、父親殺人の容疑で指名手配されてし…

映画『22年目の告白〜私が殺人犯です〜』 監督:入江悠

あらすじ 藤原竜也と伊藤英明がダブル主演し、2012年の韓国映画「殺人の告白」を原作に描くクライムサスペンス。「ジョーカー・ゲーム」「SR サイタマノラッパー」の入江悠監督がメガホンをとり、22年前の連続殺人事件の犯人を名乗る男の「告白」が新たな事…

『失われた地図』(☆3.6)  著者:恩田陸

直木賞受賞第一作! “恩田ワールド”全開のエンターテインメント長編 錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木・・・・・・。 日本各地の旧軍都に発生すると言われる「裂け目」。 かつてそこに生きた人々の記憶が形を成し、現代に蘇る。 鮎観の一族は代々、この…

『随筆古文書紀行 まぼろしの厳嶋大仏』(☆3.0)  著者:山田道信

『厳嶋道芝記』など古文書に記されていたにもかかわらず、宮島「大仏原」から消えた丈六仏〈厳嶋大仏〉の行方を求め、秘められた謎の歴史を繙く。その仏は海を渡った――。 「台座や光背はなく、像の所々に金箔が残っている。膝から下の部分の損傷が特に激しく…

『あひる』(☆4.0)  著者:今村夏子

読み始めると心がざわつく。 何気ない日常の、ふわりとした安堵感にふとさしこむ影。 淡々と描かれる暮らしのなか、綻びや継ぎ目が露わになる。 あひるを飼うことになった家族と学校帰りに集まってくる子供たち。一瞬幸せな日常の危うさが描かれた「あひる」…

『刺青の殺人者』(☆3.6)  著者:アンドレアス・グルーバー

全身の骨が折られ、血が抜かれた若い女性の遺体が、ライプツィヒの貯水池で見つかった。娘の遺体の確認にベルリンからやってきた母ミカエラは、自分一人でも娘が殺された理由をつきとめ、姉と一緒に家出したまま行方不明のもうひとりの娘を捜し出そうと堅く…

『魂でもいいから、そばにいて ─3・11後の霊体験を聞く』 著者:奥野修司

あの未曾有の大震災から、今年で6年――。 その被災地で、死者を身近に感じる奇譚が語られているという。 最愛の家族や愛しい人を大津波でうしない、悲哀の中で生きる人びとの日常に、 突然起きた不思議な体験の数々……。 《愛する亡夫との〝再会″で、遺された…

『森に眠る魚』(☆4.0)  著者:角田光代

東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通して心をかよわせるが、いつしかその関係性は変容していた。―あの人たちと離れればいい。なぜ私を置いてゆくの。そうだ、終わらせなきゃ。心の声は幾重にもせめぎ合い、それぞれが追いつめられてゆく。凄み…

『暗黒女子』(☆3.6)  著者:秋吉理香子

聖母女子高等学院で、一番美しく一番カリスマ性のある女生徒が死んだ。今晩学校に集められたのは、彼女を殺したと噂される、同じ文学サークルの「容疑者」たち。彼女たちは一人ずつ、自分が推理した彼女の死の真相を発表することに。会は「告発」の場となり…

『夏を殺す少女』(☆3.9)  著者:アンドレアス・グルーバー

酔った元小児科医がマンホールで溺死。市会議員が運転をあやまり事故死。一見無関係な出来事に潜むただならぬ気配に、弁護士エヴェリーンは深入りしていく。一方ライプツィヒ警察の刑事ヴァルターは、病院での少女の不審死を調べていた。 オーストリアの弁護…

『狩人の悪夢』(☆3.6)  著者:有栖川有栖

人気ホラー作家・白布施に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。そこには、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。 しかしアリスがその部屋に泊まった翌日、白布施のアシスタントが住んでいた「獏…

『リバース』(☆3.8)   著者:湊かなえ

深瀬和久は平凡なサラリーマン。唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れる事だ。そんな深瀬が自宅以外でリラックスできる場所といえば、自宅近所にあるクローバーコーヒーだった。 ある日、深瀬はそこで、越智美穂子という女性と出会う。その後何度か店で会う…

『ケムール・ミステリー』(☆2.6)  著者:谺健二

ケムール人を生み出した孤高の天才作家、成田亨。彼に魅せられた男が建てた屋敷は、まさに怪物の異形で覆われていた。そこで起こる連続密室死。自殺にしか見えないのだったが… しかしその「ほころび」から浮かび上がってきた全体像は誰もが予想しえなかった…

『22年目の告白-私が殺人犯です』(☆3.0) 著者:浜口倫太郎

編集者・川北未南子の前に突如現れた美青年・曾根崎雅人。 彼から預かった原稿は、時効となった連続殺人事件の犯行を告白したものだった。その残忍な犯行記録『私が殺人犯です』はたちまちベストセラーとなり、曾根崎は熱狂を煽るかのように世間を挑発し続け…

『女を観る歌舞伎』  著者:酒井順子

歌舞伎の女は、こんなにアツい!! 初めての男が忘れられず、遊女に身を落とすお姫様。「桜姫東文章 さくらひめあずまぶんしょう」 主君の子を守るために、息子を身代わりにする乳母。「伽羅先代萩 めいぼくせんだいはぎ」 親のために吉原に身を売ろうとする町…

『鬼門の将軍』(☆3.0)  著者:高田崇史

平将門は大怨霊なのか? 将門塚の祟りの真相は? 論理と驚愕の歴史ミステリー! 触れた者に呪いが降りかかるという東京・大手町の将門の首塚。その塚が壊され、男の生首が転がった。京都・宇治川には、胴体だけの首なし死体が。これは将門のさらし首が宙を飛ん…

『罪の声』(☆4.0)  著者:塩田武士

逃げ続けることが、人生だった。 家族に時効はない。今を生きる「子供たち」に昭和最大の未解決事件「グリ森」は影を落とす。 「これは、自分の声だ」 京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノー…

『挫折を経て、猫は丸くなった』(☆4.0)  編集:天久聖一

一瞬で読めて、無限に広がる416の物語。「彼女の?茲を、マウスカーソルで撫でた」「白ブリーフの落とし主は永遠に見つからない」「ヒーローたちの利害は複雑に絡み合っていた」「担任に好かれている吉田と、ただの吉田がいた」――提示されるのは冒頭だけ。続…

『桜風堂ものがたり』(☆4.6)  著者:

百貨店内の書店、銀河堂書店に勤める物静かな青年、月原一整は、人づきあいが苦手なものの、埋もれていた名作を見つけ出して光を当てるケースが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ、信頼されていた。 しかしある日、店内で起こった万引き事件が思わぬ顛…

『静かな炎天』(☆4.0)  著者:若竹七海

ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフ…

『八月は冷たい城』(☆4.0)  著者:恩田陸

夏流城での林間学校に初めて参加する光彦。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。 ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染の卓也、大柄でおっとりと話す耕介、唯…

『ブラウン神父の知恵』(☆3.5)  著者:G・K・チェスタートン

逆説の論理の魔術師チェスタトンを代表する名シリーズの第二集。 トリックの凄みでは、名作揃いの巨匠チェスタトン作品のなかでもトップクラスに位置する「通路の人影」、仮装舞踏会を舞台に神父の心理試験反対論を織りまぜた「機械のあやまち」など、いずれ…

『七月に流れる花』(☆3.8)  著者:恩田陸

坂道と石段と石垣が多い静かな街、夏流(かなし)に転校してきたミチル。六月という半端な時期の転校生なので、友達もできないまま夏休みを過ごす羽目になりそうだ。 終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見つける。思…

『さよならの手口』(☆4.7) 著者:若竹七海

探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を依頼される。かつて娘の行方を捜した探偵は失踪していた―。有能だが不…

ドラマ『そして誰もいなくなった』

二夜連続で放送されたクリスティの『そして誰もいなくなった』ドラマ版。結果として、渡瀬恒彦さんの遺作となったということで、視聴率や反響も大きかったのでは。 原作は何度か読んでますが、細かいところは覚えていないので、どこまで再現してどこまでオリ…

再読『十角館の殺人』(☆4.5)  著者:綾辻行人

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!’87年の刊行以来、多くの…

『だれもがポオを愛していた』(☆4.0)  著者:平石貴樹

諸君はアッシャー家の崩壊を見いだすだろう―予告の電話は真実を告げていた。 錦秋のボルティモア郊外で、日系人兄妹の住む館が爆発し傍の沼に崩れ去った。妹は謎めいた言葉をのこして息絶え、兄の遺体もまた水中深くに。 ほどなく、棺に横たわった美女の歯が…

映画『3月のライオン』  監督:大友啓史

あらすじ 羽海野チカの大ヒットコミックを、「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督&「バクマン。」「君の名は。」の神木隆之介主演で実写映画化する2部作の前編。幼い頃に交通事故で両親と妹を亡くし、父の友人である棋士・幸田に引き取られた桐山零。深…