『22年目の告白-私が殺人犯です』(☆3.0) 著者:浜口倫太郎

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編集者・川北未南子の前に突如現れた美青年・曾根崎雅人。
彼から預かった原稿は、時効となった連続殺人事件の犯行を告白したものだった。その残忍な犯行記録『私が殺人犯です』はたちまちベストセラーとなり、曾根崎は熱狂を煽るかのように世間を挑発し続ける。社会の禁忌に挑む小説版『22年目の告白』。

Amazonより

 映画館で予告編を見て面白そうと思い、じゃあ映画を見る前に原作を読むか、と購入したものの、これは原作じゃなくてノベライズだったんですね。
 ノベライズを読むのは『君の名は』以来ですが、なかなか感想は難しい。特に今回は映画を観てるわけじゃないので、映画では明かされなかったなんちゃら、があるかどうかも分からないので。

 とまぁ、読み終わってみて、小説としてよく纏まっていると思います。映画の設定ではありますが、時効を迎えた殺人犯が突如姿をあらわし、被害者遺族や警察、マスコミを巻き込んで、一大フィーバーを巻き起こす。時代の寵児としての持ち上げられ方は、今の時代なら十分有り得そうなこと。
 曾根崎の真意が分からないまま、本の編集者として振り回される未南子。殺人犯の本を出版したからと、友達から絶縁され、自分の好きな本と対極にある告白本ながら売れる本を作りたいたいという魅力に取り憑かれるというのも何となく分かります。

 ただ、曾根崎のビジュアルへの神格化に関しては、少し薄っぺらいかなという気もしました。これに関しては、映画だと藤原竜也というビジュアルがあって、という事になるので、映像と文字の表現の違いといえるのかもしれません。もしこれが原作本であれば、もっと違う表現をしてたのかも。
 この曾根崎の描写も含めて、何となくですが原作とノベライズの違いは見えてきたような気がします。原作は言葉を文字を駆使して、読者の想像力をかきたてる必要があると思いますが、ノベライズはまず作品としてのテンポと映画の落とし込みが一番必要なんだろうと。
 この小説もテンポは良い反面、キャラクターの心理描写などは割とあっさりしてる所もあり、取り扱ったテーマからすると、重さに欠けるかなと思います。そのあたりの不満は映画では役者の演技が補完してくれるのだろうと思います。

 ノベライズといいながら曾根崎がマスコミの前に登場した理由、事件の裏に隠された真実なんかも捻りが効いてて、わりと面白かったです。不満に思った部分がどこまで納得できるか、映画も観てみたいな〜と思います。