『インド倶楽部の謎』(☆3.7) 著者:有栖川有栖

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 前世から自分が死ぬ日まで―すべての運命が予言され記されているというインドに伝わる「アガスティアの葉」。この神秘に触れようと、神戸の異人館街の外れにある屋敷に“インド倶楽部”のメンバー七人が集まった。その数日後、イベントに立ち会った者が相次いで殺される。まさかその死は予言されていたのか!?捜査をはじめた臨床犯罪学者の火村英生と推理作家の有栖川有栖は、謎に包まれた例会と連続殺人事件の関係に迫っていく!


Amazonより

 作家アリスの「国名シリーズ」の最新作。作家アリスシリーズの不真面目な読者な私、この「国名シリーズ」を読むのは「マレー鉄道〜」以来の2作目^^;;

 今回はクイーンの幻の作品「インド倶楽部〜」からインスピレーションを受けて、タイトルから構想を練ったとのこと。

 物語の中心となる集団・・・といっても少人数の有志の集まりである「インド倶楽部」の内容がなかなかに奮ってます。輪廻転生を信じ、過去にインドで知り合い同士だった事を確信している人達の集まりであり、事件の発端となった集会では「アガスティアの葉」による予言が披露されるというオカルト系。ミステリとオカルトの相性はけっして悪くないですが、事件の調査で容疑者たちから聞く証言も現在の事と、彼らの前世であるインド時代の名前や関係が交錯して、えっとこのインド名は現代の誰で、インド時代はどんなポジションだっけと何度も?が頭の中を飛び交いました^^;;

 実際に事件が起きてからも、超常現象を否定する火村先生と超常現象ありきで事件を語る容疑者の間でのやり取りがメイン、新しい証言や物証が出てくるたびにこの展開が続くので若干ダレ気味かな、という気もしますが、実際に事件の謎が明らかになると、この部分が想像以上にに肝だったりするので油断はできません。

 表面的にはオカルト要素が強い部分は好みが分かれそうですし、犯人の動機にしても常人には理解できません^^;;ただ、物語の中の世界ではありますがそれを成立させる、少なくとも火村先生が犯人を指摘できる器はあったと思います。
 これを読んで思ったのが京極堂の「姑獲鳥の夏」。あの作品も死体消失に関してとんでもない大技を繰り出しましたが、同じようにその大技を有りにさせる器を作り上げていました。ただ作品として器の方向性は真逆だと思いますが。

 そして、このシリーズでしばし語られる火村先生の謎の過去に対して、「過去は昨日」「未来は明日」という言葉が出てきます。このフレーズが作中とても良い余韻を残してくれて、もしかしたたら少しでも火村先生のこれからのターニングポイントになってくれたらな、と。それだけでもこの作品の意義はあったと思います。
 
 

採点  ☆3.7