『あなたもスマホに殺される』(☆2.8) 著者:志駕 晃

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 中学教師・鈴木のスマホに、ある日「自殺相談室」という怪しいSNSから招待が届いた。自殺志願者の匿名の相談に、4択から1つ意見を選び答えていく中で、鈴木は他人の人生を覗き見るような感覚の虜になっていく。しかし、担当クラスの女子生徒・雨宮を招待して以降、いつのまにか「自殺相談室」が学校中に蔓延し、ついには新人教師の山本が自殺してしまい……。あなたも他人事ではいられない、驚愕のサイバー・ミステリー!


Amazonより

 「スマホを落としただけなのに」の作者がおくるSNSを土台にしたミステリ。
 ネット上での自殺相談室って昔からありますが、いわゆる掲示板やHPといったかつてのツールからSNSに舞台が変わっているのが現代的。でもこのSNSのシステムって別にSNSじゃなくてもまったく問題ないというか、SNSというよりゲームに近い気がします^^;;

 自殺相談を通して人の悩みを覗く感覚というのは、ある意味人間の奥に隠れてる欲望というか優越感をむき出しにしていくようなもので、SNSという現代的ツールだからこそではなく乱歩の時代から取り扱われてるものですが、インターネットという世界の中でその匿名性は高くなるわけで覗き見るという行為のモラル的ハードルは低くなっているのかもしれません。

 この物語の主人公鈴木先生も、安易にSNS招待状に応じたためにとんでもない事態巻き込まれるわけですが、システムそのものの気軽さ(このあたりはまさにゲーム)はのめり込むのはわからないでもないです。

 ただ、徐々に自殺相談室の泥沼に落ち込んでいく過程であったり、彼を介してSNSに参加していく生徒や同僚たちについての展開は、スピード感を優先(?)したかのような展開のせいなのか、そこまでなっちゃうところが腑に落ちない。また、主人公のトラウマともいえるある人物の造形に至っては、平成というより昭和な感じがして今の世界にこの人物がいてもカリスマになる前に問題になって人生終了なんじゃ。

 胸糞悪いラストに至る伏線に関しては張り巡らされていますが、それがなくてもなんとなく想像できてちゃうかなぁ。どうせこういうオチなら、もっと突き抜けた展開であっても面白かったかなぁ。
 素材を色々と盛り付けているけれど、どれも前面にでてきちゃって味がぼやけたって感じでしょうか。



採点  ☆2.8