『リバース』(☆3.8)   著者:湊かなえ

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 深瀬和久は平凡なサラリーマン。唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れる事だ。そんな深瀬が自宅以外でリラックスできる場所といえば、自宅近所にあるクローバーコーヒーだった。
 ある日、深瀬はそこで、越智美穂子という女性と出会う。その後何度か店で会ううちに、付き合うようになる。淡々とした日々が急に華やぎはじめ、未来のことも考え始めた矢先、美穂子にある告発文が届く。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた――。
 何のことかと詰め寄る美穂子。深瀬には、人には隠していたある”闇”があった。それをついに明かさねばならない時が来てしまったのかと、懊悩する。


Amazonより

 今更ながらの初湊さん。映像作品だけ含めても「告白」「白ゆき姫殺人事件」ぐらい?湊さんの作品を読んでないので勝手なイメージだけですが、この作品みたいに男が語り手で三人称で、さらには登場人物も男が中心で、っていうのは珍しい?

 基本のストーリーは、主人公の深瀬の彼女の元に突然届いた告発文のを巡る物語。その告発文は、3年前の友人の死に関わっていたゼミ仲間の4人にも届いてた。深瀬はその告発文の犯人を探しながら、死んだ友人・広沢の過去を尋ねていく。

 友人の死に関して言えば、突き詰めていけば確かに深瀬達4人も責任はあるだろうと思う。ネット社会の現在にこういう事件が起こったとしたら、中には「結局死んだ友人が断ればいいじゃん、自己責任じゃん」という意見も出そうだけれど、深瀬たちはそこまで決めきれるほどワルじゃない。友人の死についての罪悪感は感じている。

 一方で、事件の要因となったかもしれない事を隠していることについては、これまた「知ってて黙ってるのは、人としてどうなのよ」という言う人もいるかもしれない。作中にもそういうキャラの人が登場していたし。それはそれで正論なんだけど、この作品に関していえば、責任の重さのバランスが上手いというか、現実にこういう立場になったら、隠しちゃうかも思わせる所に落とし込んでいると思う。

 全体的にややキャラクターの内面的な弱さや人間臭さをデフォルメし過ぎて、いくらなんでももう少し自信を持てよ!!(特に主人公)、と言いたく成ったり、正義感を振り回しすぎてちょっとウンザリな人がいたりして、というところはあったけど、なんだかんだと読み進める事についてはまったく支障がない。これもまたデフォルメとリアリティのバランスがギリギリで保たれていると感じるからかも。

 解説にも書かれていたが、この小説については、結末の内容について出版社からお題があって、それをクリアするために逆算して物語が作られている所もあると思う。齟齬こそ感じないものの、読み終わってみると蛇足だったなぁという場面(友人の死に関して事故か他殺か疑う場面)があったり、主人公の彼女の立ち位置もちょっと無理があるかな、という気がしなくもない。
 そんな中、事件の真相については薄々そうだろうなと分かるが、それの提示の仕方はインパクトがあった。それまでの印象的な小道具、設定、そして違和感が伏線になってるのは気づかなったし、物語の印象が反転(リバース)しちゃうのは間違いない。
 もう一つの真実を突きつけられた深瀬はこれからどういう決断をしていくのか。その先には深瀬とその周りを取り囲む関係は復活・再生(リバース)していくのか。

 ただ、意外な犯人を提示するだけでは終わらない、水準以上の作品だと思う。


 小説で読んだので、やっとドラマの第一話を観終わりました。「カイジ」やら「藁の楯」やら「モンスターズ」、「るろ剣」にこれから公開の「22年目の告白」と、舞台経験をエキセントリックな役柄に活かしている藤原竜也(よく見ると彼の出てる映画は結構な確率でみてるな)の久しぶりの落ち着いた役というのも印象的だし、ゼミ仲間もまぁイメージ通り。小池徹平は原作と設定は違うけど、キャラを考えたらこの雰囲気は有りだなぁ〜。
 藤原竜也の彼女役の戸田恵梨香、好きな役者さんだし月(ライト)と弥海砂(みさみさ)コンビでいいだけど、もうちょっと明るめの役者さんでもいいのかなぁ〜。
 そして、オリジナルキャラのフリージャーナリスト小笠原を演じる武田鉄矢。最近は出るだけで怪しい(金八先生はどこいった)雰囲気を出しますが、今回はどう見てもドラマ版「白夜行」の笹垣刑事に見えちゃうんですが^^;;;

 

採点  ☆3.8