2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

『罪の声』(☆4.0)  著者:塩田武士

逃げ続けることが、人生だった。 家族に時効はない。今を生きる「子供たち」に昭和最大の未解決事件「グリ森」は影を落とす。 「これは、自分の声だ」 京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノー…

『挫折を経て、猫は丸くなった』(☆4.0)  編集:天久聖一

一瞬で読めて、無限に広がる416の物語。「彼女の?茲を、マウスカーソルで撫でた」「白ブリーフの落とし主は永遠に見つからない」「ヒーローたちの利害は複雑に絡み合っていた」「担任に好かれている吉田と、ただの吉田がいた」――提示されるのは冒頭だけ。続…

『桜風堂ものがたり』(☆4.6)  著者:

百貨店内の書店、銀河堂書店に勤める物静かな青年、月原一整は、人づきあいが苦手なものの、埋もれていた名作を見つけ出して光を当てるケースが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ、信頼されていた。 しかしある日、店内で起こった万引き事件が思わぬ顛…

『静かな炎天』(☆4.0)  著者:若竹七海

ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフ…

『八月は冷たい城』(☆4.0)  著者:恩田陸

夏流城での林間学校に初めて参加する光彦。毎年子どもたちが城に行かされる理由を知ってはいたが、「大人は真実を隠しているのではないか」という疑惑を拭えずにいた。 ともに城を訪れたのは、二年ぶりに再会した幼馴染の卓也、大柄でおっとりと話す耕介、唯…

『ブラウン神父の知恵』(☆3.5)  著者:G・K・チェスタートン

逆説の論理の魔術師チェスタトンを代表する名シリーズの第二集。 トリックの凄みでは、名作揃いの巨匠チェスタトン作品のなかでもトップクラスに位置する「通路の人影」、仮装舞踏会を舞台に神父の心理試験反対論を織りまぜた「機械のあやまち」など、いずれ…

『七月に流れる花』(☆3.8)  著者:恩田陸

坂道と石段と石垣が多い静かな街、夏流(かなし)に転校してきたミチル。六月という半端な時期の転校生なので、友達もできないまま夏休みを過ごす羽目になりそうだ。 終業式の日、彼女は大きな鏡の中に、緑色をした不気味な「みどりおとこ」の影を見つける。思…

『さよならの手口』(☆4.7) 著者:若竹七海

探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を依頼される。かつて娘の行方を捜した探偵は失踪していた―。有能だが不…