『暗黒女子』(☆3.6)  著者:秋吉理香子

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 聖母女子高等学院で、一番美しく一番カリスマ性のある女生徒が死んだ。今晩学校に集められたのは、彼女を殺したと噂される、同じ文学サークルの「容疑者」たち。彼女たちは一人ずつ、自分が推理した彼女の死の真相を発表することに。会は「告発」の場となり、うら若き容疑者たちの「信じられない姿」が明かされていき――。全ての予想を裏切る黒い結末まで、一気読み必至!

Amazonより

 映画化を期に手にとる。宣伝的には,いわゆるイヤミス系の作品なんだろう。映画版には好きな女優の清水富美加さんが出てて(千眼美子って、、、)、どうせ見るならやっぱり原作読んでからでしょう。

 格式ある女子高(ようするにお嬢様校)でおきたカリスマ女性徒・白石いつみの死。彼女の手にはすずらんの花が握られていた。自殺あるいは事故とみられていた事件。彼女が所属していた文芸サークルでは定例の闇鍋読書会で、彼女の死をモチーフにした作品をそれぞれの生徒たちが発表していくことになります。

 この闇鍋読書会という名の朗読会、いろいろとツッコミたくなります。そもそもこの闇鍋、色々とエグいものが入るのはもちろんですが、高級腕時計やらも入ってたりして、サークルの高級感に貢献。そもそも鍋の中身が分からない状態で、どうやって自分の創作作品を朗読するのかが気になります。映画だとその辺のビジュアルが分かるんでしょうか。

 さてその朗読会。一人ずつ自分の作品を読み上げていきますが、決められているテーマは「
白石いつみの死」。それぞれにとってカリスマであったはずのいつみの死について、一人ひとりがいかに自分がいつみと素晴らしい関係に合ったか、そして死の直前の彼女の変化、そして彼女を死においやった犯人を告発します。

 いわゆるAがBを告発し、BがCを告発し、CがAを告発し・・・というパターン。女子高が舞台ということで、いつみと彼女を取り巻くサークル仲間との関係がどこまでリアルな感じなのかは定かではないですが、まぁ、、こういうこともあるんだろうな、とは思えます。
 ただ、それぞれのエピソードの長さや濃さに差があったり、あまり内面に踏み込んでいかないというところもあり、サクサク読める反面、どこか薄っぺらい物足りなさを感じます。これが湊さんとか書いたりしたら、もっとリアリティがあるんだろうな、と読みながら感じたり。

 それぞれが告発する内容は、自分が告発される部分と矛盾します。Aは自分ではいつみの家族に勉強を教えていた、という言葉は、Bの証言の中でAはむりやり家庭教師を始めたという証言(告発)に変わっていきます。それぞれの証言の矛盾が、視点の問題で片付けるにはかなり無理があるので、読み手としても誰の証言がどこまで本当か、それを想像しながら読むことになります。(ここでもあえていうなら、証言順に章立てを並べても良かったのでは、と思いました。不連続に配置することでの意味はあまりなかった感じがするので)。
 すべての告発(小説)の前後に、副会長であり闇鍋読書会の司会も勤める澄川小百合(映画版で演じるのは清水富美加)の語りが入りますが、これがまたどこか危ういバランスの上に立っているような内容なので、この人も強烈に怪しい。

 全ての告発(小説)の発表が終わった所で、ある人物の証言が明らかにされることによって、物語の状況はとんでもない方向に向かう。意外性があるとはいえ、この事件を起こしたのはだれかということについては想像の範囲内だろうと思います。というよりまぁ、そこしかないようね、というところでしょうか。

 問題はむしろなぜこういう事件が起きたかという動機の黒さにあるわけで、これはもう、いやだなぁ〜、というしかありません。なんだか往年の少女漫画の世界を見せられてる気分ですが、実際の女子高はこんな世界なんでしょうか。

 さらに、終盤で明らかになるこれまでの告発部分の矛盾の真相についても、これが女性(女子)の通常運転だったらもう男性(男子)陣ウンザリでしょう。ある意味それぞれの生徒たちの告発小説が薄っぺらいのも理由がつくというか。そこまで計算して書かれているとしたら(特に現役作家生徒の文章が一番薄っぺらいと思わせたとこなんか)、なかなかなもんじゃないんでしょうか。

 ラストでみせるある人物のもう一つの素顔については、若干蛇足気味というかタイトルでいるところの「暗黒女子」的な様子を強調しすぎたかな、っていうところはあるし、このサークル自体の金満っぷり(豪華絢爛な部室、必要なものがあれば海外からでも取り寄せるという財力)はさすが現実離れしてますが、それでも女子のイヤーな部分は堪能できるのではないか、と思います。
 しかし、これ男性作家が書いてたら炎上するのでは^^;;;

 

採点  ☆3.6