『キリングクラブ』(☆3.0) 著者:石川智健

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 人口の1%は存在すると言われるサイコパス。そのサイコパスの中でもトップの1%が在籍する秘密の社交クラブがあった。そのクラブ「キリングクラブ」に集まるサイコパスは、一言で言うと社会的成功者。医者、ジャーナリスト、弁護士、起業家。きらびやかな社会的実績とは裏腹に、刺激と自己利益のためなら人を人とも思わぬ内面の持ち主だった。
 ある日、キリングクラブでウェイターのアルバイトをすることになった藍子。はじめは時給の高さに目が眩んでの腰掛けバイトだったが、そこに集まる人達が社会的に成功したサイコパスであることを知り、俄然興味を抱く。そして、事件は起きる。「キリングクラブ」の客であるジャーナリストの青柳が何者かに惨殺された。しかも、その死体は開頭され、扁桃体が抜き出されていたという。サイコパス扁桃体に特徴があると言われており、犯人は「キリングクラブ」を狙った可能性も考えられる。「キリングクラブ」を守る番人・辻町と共に事件を調べ始めた藍子だが……。

Amazonより

 サイコパスの中のサイコパスが集まるクラブ、「キリングクラブ」。98%のサイコパスは身近な人をコントロールした暴力で満足する凡才、猟奇殺人者として犯罪史に名を残す”危険地帯”の存在が1%、そして残りの1%がサイコパスとしての特殊性を社会的成功に結びつけるサイコパスの中のサイコパス

 謎のクラブ「キリングクラブ」にはそのサイコパスの中のサイコパスが集まる、というぶっ飛んだ設定。そんなエリートサイコパスたちが生きたまま頭を開頭されて殺されるというのも王道な展開。
 選ばれたサイコパス達が浮世離れしたある種の天才達というのはわかるし、それぞれのサイコパスの視点で語られるエピソードも独創性にこそ欠ける気はするけれど、読み物として面白いと思います。ただ、サイコパスの中のサイコパスというには、その冷酷面だけが描かれてなぜ彼らが特別なのかという部分については、キリングクラブに選ばれたということだけに集約されている気がして物足りなさは感じました。

 そんなサイコパスのエリートが殺されるという事件を追うのは、友人に誘われてこのクラブのウェイターのアルバイトになった藍子。そして、キリングクラブの番犬でありながら刑事としての肩書も持つ辻町。
 まあ、キリングクラブに雇われるだけあって、この二人もどこか変。明らかにそっち系な香りを漂わせてます。

 この小説、良くも悪くも分かりやすいです。ストーリーはシンプルで追いやすいところは良い点だと思いますが、反面物語の伏線についてもあからさまに匂わせすぎて、予想外というところまではいかないかなぁというところはあります。

 それにしてもこのキリングクラブ、ほんとにとんでもないところというか、東京の地下の広大なスペースを持っており、入場するためのセキュリティも万全。選ばれしサイコパスたちは抑えきれない渇望を、同じレベルのサイコパスと交流し発散させる。そしてこの施設は世界各地に存在する・・・。ここまでくるとリアリティは必要ないというか、もうその世界を堪能するのが一番。ラストの展開もクラブの設定を生かしたものになっているので、もう少しこのクラブの特殊性にバラエティがあったらいいのかな。
 
 

採点  ☆3.0