たいりょうのちょっと一息

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『丑三つ時から夜明けまで』(☆3.3) 著者:大倉崇裕

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闇金融「藤倉ワイド」社長・藤倉富士衛門が、自宅の離れ、地下5メートルにある書斎で殺害された。厳重なロック、テレビモニターによる監視、雨のため泥沼と化した庭には不審な足跡も残っていない。ということは、これはいわゆる「密室」というやつで…「やはり、犯人は幽霊以外にはありえません」!?―「丑三つ時から夜明けまで」他、全五編。

yahoo紹介より

 

幽霊の犯罪が公式に確認される事により、警察組織に極秘裏に編成された幽霊殺人担当の捜査5課。
とにかく謎な所属刑事と捜査一課の縄張り争いに翻弄されつつも謎の事件を追う主人公。

 

一つ一つのトリックそのものには甘さが目立つものの、幽霊という一種なんでもありな設定を持ち込みながらもきちんとロジックを成立させているのは感心。
しかもただただその設定の中で物語を動かすのではなく、短いなかでドタバタ劇も含めつつ事件が二転三転する。
この転がし方が上手いのだ。最初に収録作を読んだ段階で、「なるほど、この短編集はこういう流れの作品集なのか」と思わせておいて、次の作品ではその想像をスルッと交わす変化球、さらに次の作品ではまた違うバリエーション。結局幽霊の殺人というテーマを扱いながらも、すべての作品で違うパターンを見せつけられた感じ。
またの作品の後味もまたそれぞれ違った味わい。そういった意味では、作者の引き出しの広さに改めて感心。

 

惜しむらくは捜査5課のメンバーの個性が極めて薄い事かな~。初登場時には中々個性的なメンバーにも関わらず、それぞれの能力的個性があまり感じられなかったからかな~。まあ、個性が強すぎると作品全体に漂う落語的なおかしみが弱くなってしまう気がするのでこれはこれでいいのかもしれないな~。
それではそれぞれの作品の寸評を。


『丑三つ時から夜明けまで』
この物語の基本的な流れを理解するには最適な作品なのかな。
密室に関する部分において、部屋のロックにおいてどう考えても密室になりえない欠陥があるのは残念であるが、本編の楽しみとしては別の場所にあるので面白さとしての減点はあまり無いと思う。


『復讐』
もうこのあたりから捜査5課の間抜けっぷりが明らかになってきます。
これもまたトリック的に一箇所まったく説明してない難点があって厳しい^^;;ただ基本的な設定+『丑三つ時~』の流れがそのままフェイクになってるので、ラストのオチには結構驚いたかもしれない。


『闇夜』
これまた根本的にあのやり方でナイフが綺麗に刺さるのかという素朴な疑問が^^;;(←こんなのばっか・笑)
事件の真相が明らかになってから最後のオチまでがなかなかにホラー。特にラストページ。ヒッチコックの某映画とはまったく逆の怖さが。。。
それにしても捜査5課の私市の掌からでた光線の正体と、3日3番続いた特殊部隊VS幽霊の戦いの内容が気になる気になる。


『幻の夏山』
基本は山小屋を舞台にした怪談噺と見せかけて、人情噺的なラストにホロリ。
トリック的なトリックはほとんど無い分、単純に物語の書き手のしての手堅さを感じさせる。
今回の収録作の中では一番好きかも。


『最後の事件』
まさにタイトル通りの最後の事件。この終わり方は予想できなかった。しかしながら手法的には比較的オーソドックスなものなので、僕が単純にこの短編集の構成に騙されたということか。
ただ後味的にはイマイチ良くない。それまでの幽霊の設定からしても少々疑問を抱かざるをえない。
正直なところもう一ひねり欲しかったな~。



採点   3.3

(2007.1.6 ブログ再録)