『τになるまで待って』(☆2.6) 著者:森博嗣

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森林の中に佇立する"伽羅離館"。"超能力者"神居静哉の別荘であるこの洋館を、7名の人物が訪れた。雷鳴、閉ざされた扉、つながらない電話、晩餐の後に起きる密室殺人。被害者が殺される直前に聴いていたラジオドラマは『τになるまで待って』。"ミステリー"に森ミステリィが挑む、絶好調G シリーズ第3弾。

yahoo紹介より

 

とりあえず、どこか絶好調なのかツッコミたい「Gシリーズ」第三弾。
今回のタイトルは「τ(タウ)」。
「θ」「φ」は見たことがありましたが、「τ」はありません。
Wikipediaで調べてみると

 

● 数学において小文字で

* τ関数として用いられる。
* 捩率として用いられる。
* 置換の記号に用いられる。
* σとともに置換を表す記号。

● 小文字は材料力学で剪断応力を表す。

 

すいません、調べた僕が間違っていました。なんの事やらさっぱり^^;;
このタイトルの謎って最後には収束されるのかなあ。。。

 

で、過去2作で、このシリーズの基本探偵は海月君かと思ってきたら今回は犀川登場。しかもヘリコプターで登場し、ヘリコプターで去っていく。
いくら萌絵の肩書きや犀川の実績が凄くても、いいのか警察!?
それ以前、こうなってくるとこの作品の方向性が見えなくなってしまう。しかも最後は犯人特定されないまま終わるし。
極論を言えば、まるで壮大なる大長編の1つの章を読まされてる感じ。
前作でもそうだったのだが、事件の動機はさっぱり不明。これはもう森先生確信犯でしょう。
途中国枝先生が「動機なんて論理の邪魔になる」みたいなことをおっしゃってますし。
ああ、森先生どこに行ってしまうのでしょう。

 

じゃあパズラー小説としての完成度はどうなんだ?ということ。
この小説における大きな謎、事件発生前に起こった超常現象と密室殺人。
後者に関しては「これは反則だろう」という人もいそうなトリック。しかしまあ、決してその解答に関しての手掛かりが無いわけではないので、アンフェアであるとはいえない。
結局最も妥当な地点に着地したという方が正しい。
むしろ問題は前者のトリック。このトリックに関しては、若干手法が違うが某ミステリ漫画のトリック(金○一少年ではない)にもあったしおそらく他のミステリでも前例はあるだろうという部類のモノ。最終的に警察が調べれば(←そもそも警察が調べるという事が前提に無いトリックではあるが)分かると思うし、僕も読みながらこのトリックは思いついた。

 

しかしながら、僕の推理(←偉そう)の可能性からはこのトリックを外した。
なぜならば、部屋の中で起きたある現象だけはこのトリックでは説明できなからだ。
そして解決編では・・・

 

説明されてねぇ!!しかも登場人物だれもその問題に触れやしねぇ!!

 

ある種説明を放棄してる部分がたくさんある小説なので、無理に説明しろとは言わない(この手法を清涼院流と勝手に呼んでいる)。
言わないが、登場人物達がそれに触れないというのは如何なものか。
ここでそのネタが明らかにならない、作品全体への大掛かりなトリックの一例であるとしても(とてもそうは思えないのだが・・・)、それに誰も触れないというのは論外だと思うのは僕だけでしょうか。
その点も含めて、やはり納得いかない小説だった。
ただし読みやすさは過去のシリーズを含めて屈指の出来だと思う(笑)。


採点   2.6

(2007.1.7 ブログ再録)