『朽ちる散る落ちる』(☆3.7) 著者:森博嗣

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土井超音波研究所の地下に隠された謎の施設。絶対に出入り不可能な地下密室で奇妙な状態の死体が発見された。一方、数学者・小田原の示唆により紅子は周防教授に会う。彼は、地球に帰還した有人衛星の乗組員全員が殺されていたと語った。空前の地下密室と前代未聞の宇宙密室の秘密を暴くVシリーズ第9作。

 

いよいよVシリーズも第9弾。まさかの土井超音波研究所再登場です(笑)。
第7弾で初登場したこの研究所、そこでは地下室に関してはほとんど触れないまま終わってしまい、これもまた森さんらしいのかな?と思ってたらそうですか、ここにきますか(笑)。
それにしても林さん、こんなに一般人に協力して大丈夫なの?それぐらい謎の力が働いてるんでしょうね~、ううむ。

 

そして小田原博士再登場するし。いや名前だけは時々出てきましたが、実はこんな方だったのですか、ある意味衝撃です(笑)。
密室トリックに関してですが、地下の密室の謎は大体予想通りでしたが、細かい理論的な部分は分かりませんでした。いや、読み終わってもイマイチ構造は分かってないんですけどね、って読者の2/3は分からんと思う。
宇宙空間密室に関しては、確かに可能性としては一番しっくりくるものなんでしょうがまあアンフェアって言っていいんでしょうね~。このアンフェア要素に関してはこれまでの森作品にもちらほら見受けられますし、作者もあえてフェアorアンフェアの括りは意識してないんだとは思いますけどね。

 

なによりここまでくると、トリックメーカー森博嗣の部分にプラスして小説家森博嗣としての熟練度がかなり上がってきてるなあとあらためて感じましたね。
本来の持ち味である理系的な物語の構造計算とストーリーのリーダビリティーが上手く絡み合ってきて、この点に関しては、S&Mシリーズと較べても小説としての完成度は高いと思います。
とくにへっ君誘拐事件の見せ方や根来さん大活躍の巻の使い方などは、物語の中で自然に語られましたし、クラマックスで保呂草が見せる人間味なども昔の森作品と較べても心に染みるんじゃないでしょうか。

 

そして、へっ君のイニシャルはS・Sですか、そうですか、なるほど(笑)。
もう間違いないでしょうね、これは♪


採点   3.7

(2006.9.15 ブログ再録)