『夜のピクニック』 監督:長澤雅彦

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 第2回本屋大賞に輝いた恩田陸の同名ベストセラーを映画化。
24時間、夜を徹して80キロを歩き続ける学校の伝統行事 “歩行祭”に参加した高校生たちが繰り広げるほろ苦くも甘酸っぱい青春模様を等身大かつノスタルジックに描き出す。主演は「ルート225」の多部未華子。監督は「青空のゆくえ」の長澤雅彦。
 夜を徹して80キロを歩き通す高校生活最大のイベント“歩行祭”。3年生となり、今年が最後の歩行祭となる甲田貴子は、一つの賭けを胸にこの特別な日を迎えた。
それは、一度も話したことのない同じクラスの西脇融に話しかけること。普通の人には簡単なことが、貴子と融の間ではそうはいかなかった。
その理由は、貴子が親友の美和子や杏奈にさえ隠し続けるある秘密にあった。
一方、妙に意識し合う貴子と融の関係を勘違いしているクラスメイトたちは、この歩行祭の間に2人をくっつけようと躍起になっていた。

監督: 長澤雅彦   	
プロデューサー:上原英和 	
企画プロデュース:牛山拓二 	
	             武部由実子 	
原作: 	恩田陸夜のピクニック』(新潮社刊)
脚本: 	長澤雅彦 	
	三澤慶子 	
撮影: 	小林基己 	
編集: 	掛須秀一 	
音楽: 	REMEDIOS 	
	DAKOTA STAR 	
音楽プロデューサー:伊東宏晃 	
主題歌:MONKEY MAJIK 	『フタリ』
VFXプロデューサー:隠田雅浩 	
コンセプチュアルデザイン:種田陽平 	
音響効果:柴崎憲治 	
照明:中村裕樹 	
録音:滝澤修 	
助監督: 宮野雅之 	
 
出演: 	
    多部未華子  甲田貴子
	石田卓也 	 西脇融
	郭智博 	  戸田忍
	西原亜希 	 遊佐美和子
	貫地谷しほり 	後藤梨香
	松田まどか 	梶谷千明
	柄本佑 	  高見光一郎
	高部あい 	 内堀亮子
	加藤ローサ 	榊杏奈
	池松壮亮 	 榊順弥
	近野成美 	 さくら
	嶋田久作 	 藤巻
	田山涼成 	 校長先生
	南果歩 	    貴子の母親

 

原作自体は個人的には恩田の作品の中では可もなく不可もなくの印象だったのですが、青春小説(?)としてそれなりの印象はあったし、予告編的な「ピクニックの準備」がまずまず面白そうだったので、見てきました。

 

うーん、なんでこうくるのかな・・・・・・ってのが全体の印象。
とにかく演出の意図がわからんシーンが多いんですよね~。特に前半の歩行祭の場面を描く部分。妙な小ネタの連発がとにかく滑ってる。確かに原作にもそういった場面があったような気がしますが、映画化に関してそこは削ってもいいんじゃねえか?ってのが多くて・・・。
さらになぜか途中でアニメが挿入されます。これがまた微妙な出来具合。この歩行祭で貴子が心の中で密かに賭けをしている、という事柄が描かれているのですが、別にアニメでやらんでも、というのが正直なところでした。
あと西脇の父親の葬儀で貴子と西脇が初めて出会う場面の妙にホラーな映像が笑ってしまいました。。。

 

後半貴子と西脇の関係の謎に物語の中心に移ってからは、一気に盛り上がってくるんですけど、その部分でもどこか映像に溜めがないというか。小説でいうところの行間から漂う匂いというのをバサッと切ってる感じがして、演出的に稚拙なものを感じてしまいました。
特に物語のキーワードにもなるアメリカに転校した友人、杏奈が1年前に仕掛けたという魔法が明らかになる部分の感動が圧倒的に足りない。っていうか原作を読んでいないと、なぜ?っていう疑問が付きまとうんじゃないかな~。
正直これを大林宣彦あたりが撮ったらきちんと原作にリスペクトした物を撮るだろうし、岩井俊二あたりが撮るとノスタルジーに溢れた作品になったんじゃないかと想像してしまいました。
そういえば、音楽はREMEDIOSなんですよね~。岩井の「love letter」や「打ち上げ花火~」での音楽が好きだっただけに個人的にはちょっとしたサプライズでした。

 

まあいろいろと厳しい意見を言いましたが、まったく見れない映画かというとそうでもありません。最後の場面あたりなんかはそれなりに感動させてくれます。
その最大の要因は役者陣の頑張りじゃないのかなと。
主役の貴子を演じた多部未華子は前半の西脇に対する微妙な距離感と後半一気にその関係が接近する場面の演じわけがきちんと出来てますし、印象的な顔立ちも含めていいキャスティングだと思います。
相手役の西脇を演じた石田卓也も、映画の視点が貴子というハンデがあるもののまずまず(シーンによっては体型が微妙に痩せたり太ったりするのはどうなんだと思いますが)、忍役の郭智博や美和子役の西原亜希も無難に演じてくれてます。
ただ別の意味で強烈だったのは梨香役の貫地谷しほりと高見役の柄本佑
貫地谷しほりは、「スウィングガールズ」でもそうでしたが、とにかく妙に惹きつける演技をしますね~。確か作家かなにかを目指してる設定の役でしたが、なぜか映画の中では一人芝居を披露したりと、場面によっては完全に主役を喰ってるような。
柄本佑も強烈。高見という役は完全に夜行型の人間でロックにリスペクトを持ってる変なキャラでしたが、映像にすると原作以上に強烈なキャラでした。それを照れも無く演じてるので、かなり強烈な印象をかましてくれます。

 

全体としては恩田テイストというのはほとんど残っていない青春映画な出来ということになるんですかね~。
原作が大好きで忠実に映像化して欲しいという人にはちょっとオススメできないかも。
そうじゃない人でもかなりバランスのおかしい映画なので、正直ビデオでも十分かな。。。

 

ちなみに映画館の客は僕一人、朝一の上映とはいえまさか貸切とは・・・。
 

(2006.10.6 ブログ再録)