『文学賞メッタ斬り!リターンズ』(☆3.0) 著者:大森望、豊崎由美

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あの二人が帰ってきた!さらに賑わう文学賞界隈を、ますます冴えた刃で徹底論破。続々現れた新興文学賞や若手作家、選考のあり方…小説読み必読。

目次
1 文学賞に異変!?
2 '04~'06年、三年分の選評、選考委員を斬る!
3 UNDER30の新人作家、有望株は?
4 メッタ斬り!隊活動の記録(鼎談「小説よ、媚びるな!―Z文学賞選考会実況中継」
当たってほくしくない予想が当たった芥川賞、まあ、こんなもんじゃないですか?の直木賞(第一三一回芥川賞直木賞)
順当すぎるほど順当、両賞ともに大本命が来た!(第一三二回芥川賞直木賞)
事件だった直木賞候補作のラインナップ。しかし、両賞とももっとも地味な結果に(第一三三回芥川賞直木賞)
候補者在庫一掃セール?の芥川賞東野圭吾を軸に思惑渦巻く直木賞(第一三四回芥川賞直木賞)
ショック!ええーっ!受賞作がまたしてもすべて文藝春秋絡み!?(第一三五回芥川賞直木賞))
5 決定!第一回「文学賞メッタ斬り!」大賞

yahoo紹介より

 

文壇の大御所から若手、芥川・直木賞からメフィスト賞まで遠慮なくバッタバッタと斬り倒し好評を博した「文学賞メッタ斬り!」が帰ってきた。
しかしながら、正直なところ前作に較べると数段面白さは落ちていた!!

 

もちろん前作に引き続いて面白い部分はある。
それはやはり選考委員のハチャメチャ振りを暴露する場面。前作で大人気だったジュンちゃん(渡辺淳一)・シンちゃん(石原慎太郎)の意味不明(というか読めなさっぷり)は健在だし、今回は控えめだったテルちゃん(宮本輝)に変わってツモ爺(津本陽)が急上昇、老人力のパワーをきっちりアピール。とくに一部で有名な噂だった東野圭吾がなかなか直木賞を受賞できなかった理由、常にジュンちゃんが反対してきた事が最大の原因なんですが、それが作品の内容というよりもジュンちゃんお気に入りの銀座のホステスをケイゴに取られたのを恨んでる、というお話を実話として紹介している部分はもうなんだかな~という感じで笑わせていただきました。
ただ、高校時代に愛読していた阿刀田高先生の原因不明のボケっぷり(選評の文章でダーテー<=ダーティ>、リアリテー<=リアリティー>という、ちょっと考えられないカタカナ表記を披露していた)が愛読者としてはちょっと寂しかったな~。

 

さて今度は逆に読み物として厳しかった部分。
これは一重に突っ込みの内容がより高度になった部分が多かったということ。というのは、今回は前作以上に作品そのものに深く突っ込んで語られる部分が多い為、槍玉に挙がった作家、あるいは作品を読み込んでいないと面白さが伝わってこないということが多かった事。
特に今回は直木賞芥川賞にかなりのページ数が割かれているので、読書の大多数がミステリに偏っている自分としては少々知識が追いつかなかった。
また、冒頭で島田雅彦をゲストに迎えた公開討論会採録しているのですが、どうしても現場の生の会話を載せているので読み物としてやや練りこみが足らなかったのも読んでて少々かったるかった。
まあ島田先生が先輩の作家達を遠慮無しに斬っていく様は前作以上に大丈夫かと思いましたし、現在の文学界においてストーリーテリングが過度に重要視されている事に対する警鐘などはなかなかうなずくものがあったんですけどね。

 

また、最後に収録されている第一回「文学賞メッタ斬り!」大賞のサッカーW杯に見立てた選考模様に関しては、あまりに内輪が楽しみすぎて完全に企画倒れだったような気が・・・。

 

まあ全体の構成に関してはしょうがないかなというところもあるんですよね。
前作でおおよその文学賞の傾向と対策(?)を暴露したことによって、今回はどうしても対象を作品そのものに絞っていかなくちゃいけなくなった部分もあるでしょうし、そうなるとどうしてもこうせざるをえないと。
次にこの本が発売されるときには、ぜひ新設の文学賞が増えて新たな選考委員のエースが登場してほしいものです。
もちろんタイトルは「~フォーエバー」だよね?


採点   3.0

(2006.10.6 ブログ再録)