邦画『レイクサイド マーダーケース』 監督:青山真治

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監督 青山真治 原作 東野圭吾 「レイクサイド」 キャスト 役所広司        並木俊介 薬師丸ひろ子      並木美菜子 柄本明          藤間智晴 鶴見辰吾        関谷孝史 杉田かおる 藤間靖子 黒田福美 藤間一枝 豊川悦司 津久見

 

昨日、民放で放送してたのを見ました。
原作は発売された当時に一度読んだきりだったんですが、大まかなトコロは大体覚えていたんですけど、ストーリーはほぼ原作を忠実に再現してたんじゃないでしょうか。
ただ地上波放送にあたって、場面のカットが在ったのか無かったのかはちょっと気になりました。伏線の移し方のピックアップの基準がよく分からないので、もしかしたら少しは再編集されてたような気が。

 

作品全体としては、若干ダイジェスト気味ながらミステリのツボを押さえてたと思います。ただ原作のイメージ(具体的な部分はあまり覚えていなのですが)より、役者陣の演技が濃かったせいか、作品の雰囲気も1.5倍増しぐらい人間色が濃かった気もしますね~。
これは多分演出的な狙いなんでしょう。なんとなくの印象ですが、青山監督は舞台を意識して撮影したような気がします。外にでる場面はそれなりにあるものの、重要な場面はほとんどロッジの撮影部分ですが、このシーンは役者の立ち位置とカメラの関係、カメラフレームの構図や動き方が、舞台上の役者と客席の関係のように見えました。
特に登場人物の捉え方が通常では考えられない構図(喋ってる人物の顔が半分しか映ってないとか・・・)などは、舞台上の動きを見る観客の視線の動き、視野に準じていた気がします。
これは虚構の世界である映画の中に、さらに虚構の舞台というものを持ち込む事によって、お受験という現代のシステムに端を発した、事件全体を包み込む歪つともいえる空気を画面に写し取ろうという試みではなかったでしょうか。だからこそ、過剰ともいえる役者陣の演技が成立しているんじゃないかという気がします。
ただ、それが原作で東野さんが表わしたかったであろう部分とは若干ずれているような気がしました。
それにしても、あのラストは・・・。ライターをあそこに登場させる事によって彼らの未来を暗示させてるような気がしますが、それにしてもあんなホラーテイストをやっちゃうとそれまでの滲み出るような醜さが霞んでしまうような。

 

それとは別に映画としてのお遊びも目を引きましたね~。
薬師丸ひろ子演じる美菜子が、旦那に向かっていう「私が彼女を殺したの」、思い切り彼女の女優としての出世作Wの悲劇』へのオマージュですよね~。知ってる人なら誰もが「私、おばあさまを殺してしまった!!」を思い浮かべますよね。
そういえばあの映画も夏樹静子の原作を劇中劇の舞台をして構成したものでしたね~、そういう意味では監督自身がそうとう意識したのかもしれませんね。
そして、映画の内容とは絶対に関わってないであろうお遊びは、鶴見辰吾杉田かおるの夫婦役でしょう。ちょっと笑ってしまいました。
これで豊川悦司の役を武田鉄矢が演じてたらもう完璧でしょう(笑)。

 

とりあえず、なんとか東野作品を最低限壊さずに2時間ドラマ的な完成度にならなかったのは幸いでしょうか。
 

(2006.6.3 ブログ再録)