たいりょうのちょっと一息

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『ふたたび赤い悪夢』(☆3.6) 著者:法月綸太郎

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法月綸太郎のもとに深夜かかってきた電話。救いを求めてきたのはあのアイドル歌手畠中有里奈だった。ラジオ局の一室で刺されたはずの自分は無傷で、刺した男が死体で発見される。恐怖と混乱に溢れた悪夢の一夜に耐えきれず、法月父子に助けを願い出た。百鬼夜行のアイドル業界で"少女に何が起こったか"。 


Amazon紹介より

 『頼子のために』『一の悲劇』と合わせて3部作といわれる作品であり、『雪密室』で最後まで謎のまま終わったアイドル畠中有里奈こと中山美和子の秘密にまつわる事件を描いた作品です。

 西村頼子の死にまつわる事件において、手痛い傷を受けた綸太郎が本人の意思に反して再び探偵業を請け負わざるを得なくなった苦悩。もちろんひとつの作品として成立はしてるんですが、小説という形をとったクイーン論みたいな読み方も出来るような入魂の1作だと思います。

 作中にもたびたび触れられてるように、『九尾の猫』『十日間の不思議』で傷ついた探偵エラリイ・クイーンを自らになぞらえるような綸太郎の姿は、そのまま著者である法月綸太郎の苦悩でしょう。
 現在進行形の事件と、美和子の秘密にまつわる過去の事件。現在の事件の構造そのものはいかにも現代の推理小説的というか、非常に俗的な発想によって引き起こされる事件です。それに対して過去に起きた事件は人それぞれの心に抱えた傷が引き起こした悲劇です。

 それぞれタイプの違う2つの事件は、ともに予期せぬ部分を抱え事件がより悲劇的な展開を生んだと考えられます。ひとつの謎が解明されてもそこに介在する個々の悲劇は収拾せず、むしろまた新たな悲しみを生み出す。では誰がこの悲劇の連鎖を止めることが出来るのか。

 綸太郎は作中で出会う一人の幼馴染の女性から、ある言葉をプレゼントされます。それにより、少なくとも綸太郎の魂は少しでも救われ、されには美和子や彼女の家族も絶望の中に光を見い出します。

・・・傷を治すことなんて、他の人にできない。自分しか出来ないんだ・・・

 正直うまく感想がまとまらないよ~。
 個人的に新本格以降で最も影響を受けてるのが『頼子のために』なので、そこから派生する作品を語るときには自分の思い入れが強すぎて、もうとにかく読んでくださよ、としか言えません。

 でも必ず順番で、少なくとも『頼子のために』を一番最初に読まないとだめですよ~。あと文庫版解説の笠井さん。冒頭で3部作の犯人に触れるという注釈はいいんですけど、『九尾の猫』の犯人にも言及してるんですが・・・。

(2006.3.29 ブログ再録)