クイーンのもとへ匿名の手紙が届いた。中にはライツヴィルのゴシップを知らせる新聞の切り抜き記事が数枚入っていた。”町の隠者”の病死、”大富豪”の自殺、”町の呑んだくれ”の失踪。この三つの事件の共通点は?手紙の主は不敵にもクイーンに挑戦状を叩きつけてきたかのようだった。だが、懐かしの土地へ赴いた彼を待ち受けチタかのように古い童謡に憑かれて犯行を重ねる殺人鬼にクイーンもなす術がなかった!
ハヤカワミステリ文庫より
ハヤカワミステリ文庫より
ライツヴィル物も遂に第4弾になります。今回は童謡の見立て殺人をテーマにしてます。クイーンの童謡殺人といえば、『靴に棲む老婆』が思い浮かびますが、今回はそのテーマの第2弾になるのでしょうか。
4作目になると、過去のシリーズで登場してきた人物も少なくなり、今回はあの“町の呑んだくれ”アンダースン爺さんまで殺されてしまいます。シリーズを通して読んでいる人にとってはショックですね。でも、いまだにデイキン署長は健在なのには、ホッとしますが。
というか、まず物語の冒頭でアンダースン爺さんに娘がいた事がわかります。いや~、結構衝撃でした(笑)。
作品としては、重くもなく軽くもなく、適度に読み応えのある佳作といった感じでしょうか。ライツヴィル物共通のエラリーの探偵としての役割は、この作品にも共通しています。しかし、事件が解決後にエラリーが味わう苦い感傷も今回が一番救いがあるような気がします。ただ、疑問なのは、前作『十日間の不思議』であれほどのダメージを負ったエラリーが、あまりその感情を表わすことが無い点かな。
順番に読んできた人には十分楽しめる作品だと思います。