災厄の町 著者:エラリー・クイーン

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失踪して三年、突然戻ってきたジムと、許婚のノーラは何事もなかったように結婚した。が、ある晩、ジムの筆跡で殺人計画の詳述された手紙が発見され、ノーラは卒倒した…… 美貌の三姉妹を持つ旧家に起った奇怪な毒殺事件。ライツヴィルを舞台に錯綜する謎と巧妙な奸計に挑むクイーンの名推理。本格の代表傑作。

 

 小学生の頃、クイーンの『エジプト十字架の謎』を読んで感動。
 でも、エラリイより、ドルリー・レーンが好きだった。 最近、ロジックというものに興味が湧き、少しづつ再読を始める。
 これはいわゆる、ライツヴィルというアメリカの田舎町(架空)を舞台にしたシリーズの1作目。一般に後期クイーンといわれる時代。 この町に住む資産家の娘の婚約相手が、突然失踪。それから数年後、その婚約者が突然帰郷、2人は結婚式を挙げる。幸せなはずの結婚生活。
 しかし、それは新郎が妹に書いた3通の手紙の出現により、少しずつ災厄の影が差し込み始める。それは、新婦の病気と、死亡の知らせの通知だった。 バカンスでこの地を訪れていたエラリイが、この事件に立ち向かう。

 推理小説を読みなれている人には犯人が分かると思う。クイーンのロジックは、消去法的に可能性を探っていくと、一つの答えにたどり着く。この過程は良くできている。  しかし、ロジックの出来よりもそこから炙り出される犯行の動機が、あまりにも悲しい。そして、事件を解決する為に存在するはずの探偵が、ただ事件を語る為に存在してしまう。 後期エラリイシリーズの命題ともいえる、

 探偵の存在意義。 この作品ではまだかろうじて探偵である事を証明するエラリイ。 『フォックス家の殺人』『ダブル・ダブル』『十日間の不思議』と続くエラリイの魂の探求がここに始まる。