『UFO大通り』(☆2.4) 著者:島田荘司

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人気探偵・御手洗潔シリーズ、最新作!!表題作はUFO遭遇を語るおばあちゃんの不思議な話は本当なのか?御手洗と人気を二分する石岡クンも活躍。もう一作は、死体が動いた謎を御手洗が鮮やかに解く。

 

現時点での御手洗シリーズ最新作になりますかね、表題作と『傘を折る女』の中篇2本が収録されています。
『傘を折る女』に関しては、「メフィスト」に発表された時に記事を書いたのでそちらをご覧いただくとして、表題作『UFO大通り』の方なんですが、正直出来は良くない。
 
まず小説としての大前提ともいえる文章があまりに雑。正直『リアル鬼ごっこ』を彷彿させる部分が何箇所かあった。
登場人物の書き分けに関しても正直魅力的なものに乏しい。
いきなり提示される宇宙人絡みの謎の提起はかなり興味をそそりますが、そこから導き出される解答に関しては少々苦しい。
トリック的な部分では『傘を折る女』に共通する部分もあり、それに関しては単行本化を意識しているのだと思う。
ただあまりにもトリックの解説が専門的文章すぎて、簡単に語れるものを難しく語ってるようなところが小説としての魅力を大幅に削いでいる。
さらには御手洗の推理というのがあまりに超人的すぎるというか、論理の飛躍が激しく納得しかねる。矢吹駆なら「探偵というものは本質的直感により事件の真相を認識している」とでも言いそうだ。

 

さらに最大の問題点は、前々作『帝都衛星軌道』でも指摘したテーマ性の乖離が激しい部分。
冒頭、物語は「ある刑事の捜査日誌」という形で始まるが、この手記というのが吉敷物でも扱われる事があった冤罪を生み出す刑事の存在の象徴のようなキャラクターであるのだが、この造形そのものに著者の警察に対する不信感が滲み出ている。
それ自体が悪いとは思わないが、最後まで読み通すと分かるのだが実はこの手記自体が小説にもたらす効果はほとんど無い。しかもその直後、同じ内容が別の登場人物によって語られるに至っては、冒頭の部分が著者の主張のためのみ存在しているのがはっきりしてしまう。
また作中で御手洗がこの刑事と対峙する場面においても、冤罪を生み出す要素として指摘しているのだが、物語の構築が弱いせいもありそれが御手洗の台詞というより島田荘司の台詞と感じられる。
それ以外にも島田作品に度々見られる女性に関する偏見的とも捉えかねない表現が今回も使われている。
女性の行動や思考がその登場人物の背景も含めて形成されるのではなく、あくまで女性一般の大多数がこういった危険を多分に持っているという著者の主張が滲み出ていると思うのは気のせいだろうか。

 

それにしてもここまでくると、小説における物語とテーマ(あるいは著者の主張)のバランスが逆転しているとしか思えない。
エッセイと小説の境界線があまりに曖昧なスタイルというのは、著者自身が語ったミステリの理想系からどんどん離れていってるのではないだろうか?
 
採点   2.4

(2006.9.16 ブログ再録)