『猫丸先輩の空論』(☆4.0) 著者:倉知淳

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年齢・職業ともに不詳の童顔探偵猫丸先輩が、日常を"本格推理"する!イラストレーターの家のベランダに毎朝決まって置かれるペットボトル、交通事故現場に集結させられた無線タクシー、密室状態のテントの中で割れ、散乱していた7個のスイカ…などなど不可解で理不尽な謎がずらりと解かれる推理の極み6編。

 

久しぶりに猫丸先輩物を読みました。
いや~やっぱり猫丸先輩は猫丸先輩ですね、ものすご~くはた迷惑なのにどこか憎めないといいますか。

 

そして前作の「~推測」に続いて今回は「空論」。
そうこの空論というのがまさに曲者といいますか、数々の不思議な謎に首を突っ込んでくる猫丸先輩の推理はあくまで想像、この短編のほとんどが結局その推測が正解だったのかわからない、つまり机上の空論。
でもそれこそが猫丸先輩の真骨頂。どんな捻くれた空論も妙に説得力を持っているし、なにより先輩の語る推論に悪意がないといいますか、悪戯心たっぷりながらも最も優しい空論を語っているような気がして、意外と(?)優しいんですよね~。

 

今作のお気に入りは、「とむらい自動車」と「魚か肉か食い物」かなあ~。
前者はシリーズ読者にはおなじみの八木沢に衝撃の展開が待ち受けていて、読みながら別の意味でドキドキ。
後者はとにかく大食い女子大生早苗の食いっぷりに関する描写がほんわかしてよかったなあ~。
あとは肉球ファンとしては、「子ねこを救え」かなあ・・・。

 

どの事件の推理もほかに可能性があるんじゃないかという意味では共通してる。
でもこの空論はこの空論でいいじゃん、採用しましょう!!という部分にきちんと説得力あるから空論でも楽しめる。
解決の切れ味ではなく、むしろ見せ方の巧さで解決を成立させる。
こういう作品はあまりないのかな~、と思うだけにまだまだ猫丸先輩シリーズ読みたいなあ~♪



採点   4.0

(2006.9.16 ブログ再録)