『傘を折る女』(☆3.0) 著者:島田荘司

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小説現代メフィストに最新号に掲載された読み切りです。
長さは2段組約90ページなので、中篇程度になりますかね~。図書館で本を探してる時に偶然見つけたので、その場で呼んでみました。
時代設定は、御手洗が海外に旅立つ前、ということで久しぶりに御手洗&石岡のコンビが復活ということになります。

冒頭で御手洗がその推理の過程を詳しく語ったと書いてある通り、確かに今回の作品では過去にないぐらいいかに真相まで辿り着くのか、っていうのが事細かに書かれてます。
ラジオの電話相談コーナーで放送された、雨の夜持っていた傘をわざわざ自動車に轢かせて折ってしまう女の謎。
この放送を聴いていた石岡が御手洗に尋ねる、という感じで小説が始まり、推理過程の視点・傘を折った女の視点が交互に描かれます。
基本的には御手洗が推理し、それを追う形で真相が女の視点で語られる・・・・って構成なんですが、途中で突然2つの視点で語られる1つの物語に食い違いが出てきたりして、あ~島田荘司なんだなと思ったりして。

ただ肝心の推理の過程部分が微妙にキツイ。
推理の内容的にはまあちょっと強引なトコロがあるけれども、それなりに論理的思考により可能性を絞っていてなるほど~って思うんですけど・・・これらの記述がほとんど御手洗&石岡(あるいは御手洗&刑事)で書かれていて、この部分が非常に読みにくいと思いました。
冒頭のラジオ放送の記述でも明らかに意味の通じない台詞(最後までこの部分が事件を推理するカギなのか!!って疑ってました)があったり、全体として会話シーンに精彩が感じられません。
正直、一瞬意味が取り辛いって思うところが何箇所かあって、読むのが止まっちゃってリズムが狂いました。

最近の島田作品は、面白いことは面白いんだけど、イマイチ風景が浮かびにくいっていう印象がついてて、だんだん読みづらく感じるようになってるんですが、これもそんな印象が最後まで拭えなかったです。
ただ、その分を中篇という適度な長さのスタイルのおかげで最後まで一気に読み終えれたのは、成功かもしれないとちょっと思います。
まあ、そのうち短編集に収録されるんだと思いますが、もしどうしても早く読みたいって言う人は・・・って感じのお勧め具合です。

 

(2006.4.30 ブログ再録)