『赤い指』(☆4.0) 著者:東野圭吾

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直木賞受賞後第一作。構想6年の後に書きあげられた書き下ろし長編小説、ついに登場! 身内の起こした殺人事件に直面した家族の、醜く、愚かな嘘に練馬署の名刑事、加賀恭一郎が立ち向かう。ひとつの事件を中心に描き出されるさまざまな親子像。東野圭吾にしか書き得ない、「家族」の物語。
『放課後』でのデビューから数えてちょうど60冊目にあたる記念碑的作品。 

 

東野圭吾の最新刊(?)は、久しぶりの加賀恭一郎登場。加賀ファンにとっては待ちに待った作品でしょね~。

 

その加賀さん、カッコ良すぎです。
些細な会話や物証から真相を導き出す手腕といい、解決を解決だけに終わらせない逮捕シーン。
そしてなによりも父隆正を巡る加賀の描き方(特にラストシーン)には、加賀ファンご満悦という感じになってるんでしょうか。
また今回は従兄弟である刑事松宮を配する事によって加賀を描写するという手法が、より物語に膨らみを持たせているような気がします。

 

また作品的に考えても、倒叙物として描くことによって犯人側の家族、刑事側の家族という二つの家族を対比させ、事件が引き起こした悲劇性がより強調されている気がします。犯人側の心理の描き方、加賀の捜査の流れ、クライマックスの見せ方など特に文句はつけようが無いだろうと思う。

 

ただあえていうなら、犯人側である前原八重子のキャラクターが、類型的でやや深みが欠けてしまうかなと思ってしまった。
事件を起こしたと告白した息子に対しての感情の部分では理解できるものの、義理の母政恵との関係がやや平凡な描写に終始してまったと思う。
昭夫と政恵の実の親子の関係に関していえば、クライマックスの盛り上がりと真実の描き方を含めかなり丁寧に描写されており、心に突き刺さってくるものがあった。
それだけに、そのクライマックスでの八重子の行動に対してやや物足りなさを感じてしまった。
この作品に登場する多くの親子関係の中で唯一血の繋がっていない政恵と八重子だからこそもう少し見せ方を工夫して欲しいかなと。

 

ただ、最初にも書きましたが加賀ファンには十分納得できる出来だと思いますし、直木賞受賞第1作、そしてなにより東野ファンを満足させる作品であるのは間違いないでしょう。


採点   4.0

 

(2006.9.1 ブログ再録)