たいりょうのちょっと一息

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『コールドゲーム』(☆3.7) 著者:荻原浩

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高3の夏、復讐は突然はじまった。中2時代のクラスメートが、一人また一人と襲われていく…。犯行予告からトロ吉が浮び上がる。4年前クラス中のイジメの標的だったトロ吉こと廣吉。だが、転校したトロ吉の行方は誰も知らなかった。光也たち有志は、「北中防衛隊」をつくり、トロ吉を捜しはじめるのだが―。やるせない真実、驚愕の結末。高3の終らない夏休みを描く青春ミステリ。

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この小説が初荻原浩であります。

 

読んだ感想は本格ミステリではなく、どちらかというとサスペンスですね。内容的にはちょっと天童荒太さんの『家族狩り』(オリジナル版。単行本版はもはや別の作品ですからねえ)を思い出しましたが、それよりはこっちの方が表現をちょっとソフトに、なおかつ青春要素がかなり強いわけですが。

 

どちらにも共通するのは被害者が加害者に対して感じる罪悪感みたいなものでしょうか?
『家族狩り』の場合罪悪感を与える方法としてはかなりイビツな手法をとってますが、こちらの方はもっとストレートですね。
イジメというのは、現代においても大きな問題のひとつかと思いますが、そこに存在する無自覚の加害者の視点を著者は意識しています。自覚的な加害者というのは、ある瞬間において明確な罪悪感を感じる可能性は非常に高いとい思うのですが、逆に無自覚な加害者(例えばイジメには加担していないものの、イジメを止めるという行動をしなかった)は、無自覚な分自分の罪悪感に関しても曖昧になってしまい、より被害者を傷つけてしまう事がありますよね。
これはおそらくほとんどの人が大なり小なり似たような事を感じてしまう訳ですが、主人公の光也もその一人。ただ彼の場合は、ある段階においてかなり自分の罪を自覚しそれに向き合っていくわけですが。

 

ただこの光也の描き方や、ラストの場面での学級委員長だった女の子の描き方がややステレオタイプ的になっているせいか、もう一つ胸に迫ってくるものが足りなかったかなという気がします。本書は文章もまとまっていて非常に読みやすいし盛り上げ方も上手い分、逆にそれが小説のテーマという部分でちょっと作品の方向性を曖昧にしてしまってるかなと思いますね。
もう少し著者のテーマみたいなものを見せて貰った方が、ラストでもっと前向きになれるかな。

 

最後に、本書の紹介文にある、「驚愕の結末」という部分にはちょっと違和感があります。
ラスト、ミステリを読みなれた方ならかなりの確率で展開を読める可能性はあるものの、展開としては確かに驚愕といってもいいのかもしれません。
ただそれをあくまで物語の一つの要素であって、この作品の本質とは少しずれてる気がするんですよね・・・。


採点   3.7

(2006.8.1 ブログ再録)