『天に還る舟』(☆2.0) 共著:島田荘司・小島正樹

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昭和58年12月。『火刑都市』事件の捜査を終えた中村は休暇を取り、妻の実家・埼玉県秩父市に帰省していた。そこで中村は一つの事件に遭遇する。地元警察は自殺と判断した死体。これに不審を抱いた中村は捜査を開始する。その直後に発生する第二の殺人!!そして事件は連続殺人事件へと発展していく!!多くの遺留品、意味的な殺害方法。多くの謎の裏に隠された真相に中村が挑む!! 独自の「本格ミステリー論」を提唱する島田荘司と気鋭の継承者小島正樹。二人のコラボレートで起こる奇想天外な謎の数々!!本格ミステリー連続殺人の究極。 


 

今回のあらすじは「奇想の源流」より引用させて頂いてます。
厳密にいうと島田御大の単独作ではなく、小島正樹さんとのコラボ小説です。

で、小島正樹って誰???調べてみると、『御手洗パロディ・サイト事件』に参加された方だそうな。
それにしてもここでいうコラボってどういう形式なんだろう?普通に考えると、プロット担当・執筆担当と考えるべきだと思うんですけど。
とすると普通は経歴から島田御大が執筆と考えるべき(中村さんだしね)なんですが、それにしては文章が・・・。とすると、その逆か?そうなるとこの小島さん、ある意味物凄く羨ましい立場です。このあたりの真相を是非明らかにして欲しい。知ってる人がいたら教えて下さい。

で、内容はというと島田御大の名前を冠するだけあって、らしいミステリに仕上がってます。
まるで見立て殺人のような死体の数々と、それに相応しい(?)豪快無比なトリックと、ファンならたまりません(やっぱり御大がプロット提供なのか?)。

しかし、これが面白いかというとあまり面白くないです。
御大の、特に初期の作品なんかは『占星術~』『斜め屋敷~』にしろ、現実的に考えるとまずありえないだろうトリックを、緻密な肉付けにより強引なまでに説得させてくれる訳ですが、これに関してはその辺の説得力が薄い。この辺の原因は、情景描写に関しての説明が下手なのに原因があるとしか思えない(ますます執筆小島担当の線が濃い・・・)。
さらには、今作において中村刑事の相棒を務める海老原。彼は素人、しかも被害者と同じ宿に止まっていながら、何の説明も無く容疑者から外れており、しかも中村さんは何の疑いも無く素人さんを捜査に連れて歩いちゃいます。
うーん、どんなに下手なミステリ作家でもこのあたりには何とか説明をつけようとしてるでしょう(そこに説得力があるかどうかはおいといて)。正直、僕は最後まで彼が犯人だと思ってましたよ、露骨に疑われなさ過ぎて。

ノンシリーズ作品の佳作『火刑都市』以来久しぶり(ですよね?)の主役であり、影のファンも多そうな中村さん作品としては、どうにもお粗末な出来のような気がします。

うーん、結局このコラボの謎に対する自分なりの解答がみつからないよ~。

(2006.5.16 ブログ再録)