『殺しの双曲線』(☆4.0) 著者:西村京太郎

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都内で起きる連続強盗事件。東北の雪に閉ざされたホテルに無料で招待された6人の若い男女。強盗事件は双子の犯行とわかっていながら、兄弟 どちらが実行犯か、警察は立証できない。一方、陸の孤島と化したホテルでは密室殺人事件が起きる。そして再び…。あざなえる縄のごとくに並行する二つの物 語は、どこでどう結びつくのか。

Yahoo紹介

 

西村京太郎氏といえば十津川警部とトラベルミステリー、アリバイトリック。
お父さんの出張のお供というべき人気作家でありながら、パターン化された作品と多作ぶりに本格志向の読者には敬遠されがちですが、初期の代表作でもあり、クリスティの『そして誰もいなくなった』へのオマージュとも言うべきこの作品は、今読んでも十分面白い作品です。

 

冒頭でいきなり作者はこう書いています。

 

  この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したものである

 

いきなりメイントリックを暴く訳ですから、作者は相当自信があったんでしょうね。
ストーリーは、双子ということを利用した連続強盗事件と、宮城県の雪深い山中に立つロッジでの連続殺人(いわゆるクローズド・サークル物ですね)が平行して描かれる訳ですが、それぞれの事件の謎(特に強盗チームのユーモラス加減)と、一見無関係な2つの事件が一体どう結びつくのかが、スリリングに描かれていてトラベルミステリ物しか知らない読者にとってはかなり新鮮に移ると思います。

 

ラストに明かされるトリック(もちろん双子トリックですよ~♪)の意外性は、それまで綿密に張り巡らせた伏線と相まって、新本格以降の読者でも十分堪能出来るんではないでしょうか。
僕もある程度想像をしながら読んではいたんですが、真相が明らかになる部分にはそうとう感心しちゃいました。読後感もなんともいえない余韻があって、逆にちょっと現代風かも。

 

動機に関して捻りはあるものの若干それでそこまでやるか?というのと、作中で『そして誰もいなくなった』の真相に触れてる部分があるのは残念ですが、それを差し引いても今から35年前の作品とは思えない独創的な作品だと思います。

 

西村京太郎=鉄道&オヤジ用と読まず嫌いな方、この本だけでも手にとってはいかがでしょうか?


採点   4.0

(2006.6.1 ブログ再録)