たいりょうのちょっと一息

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『ユージニア』(☆4.6) 著者:恩田陸

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あの夏、丸窓の屋敷で催された米寿の祝い。運び込まれたジュースを飲み、17人が死んだ。現場に残された謎の詩、「ユージニア」。唯一生き 残った、盲目の美少女。緊迫感溢れる、極上のサスペンスミステリー!街を悪夢で覆った、名家の大量毒殺事件。数十年を経て、今明かされる、遺された者たちの思い。果たして街の人々は真実を語っているのか?いったい誰が、なぜ無差別殺人を?誰もが見落とした毒殺事件の「真実」が、時を経て、様々な人の証 言で暴かれてゆく。



Amazon紹介より

 

第59回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門受賞作品。

最初に、僕は恩田作品に関してはあまりいい感想を持った事がありません。
そんなに作品自体を読んでないんですが、『六番目の小夜子』『夜のピクニック』にしろ、どこか作品に入り込めないんですね。物語自体の良さは認めるんですが、どうも不完全燃焼に感じるところがあって。

そして、『ユージニア』です。
最初の数ページを読んだ時には正直最後まで読み通せるかなと。正直この小説の読み方がその時点でよく分からなかった、つまり文章の表現にどこか視点の定まらないような不安を感じさせたというか・・・。
読み終わってみると、だからこそこの文章であり恩田陸ではないかと。
作中の登場人物の一人が、「フィクションでも無くノンフィクションでも無く・・」といった様な台詞がありましたが、その例えこそがこの小説を言い当ててると思います。

構成として、インタービュー形式による事件の関係者の独白と、やはり関係者達が事件前後の動きや心情を描いた部分(おそらくは作中で語られる「忘れられた祝祭」からの抜粋の形式ではないですかね)が殆どを占めている訳ですが、特に独白部分において、関係者の誰が喋っているかはっきりしているにも関わらず感じた、主体が不明の文章を読んでいるような妙な居心地の悪さが、この事件全体を包む関係者の一人がいうところの透明な悪意の動機をはっきりと浮かび上がらせてる気がします。

小説そのものは犯人と動機について、ある程度真相を語ってはいると思わせるものの確定させずに終わっています。そしてこの終わり方も賛否両論分かれるような気がします。
僕としては、この作品の終わり方は恩田作品、というかこの作品だからこそ有りなのではないかと。
途中読んでて、今回は相当計算された文章で書かれたような気がします。

あえて言うなら、提示された謎(白い花のくだりなど)にある程度自分なりの解答があるわけですが、それすらも合ってるのかどうか不安になってしまう事ですかね。

これは相当読み手によって感想が変わる(もしかしたら恩田作品がすべてそうなのかも知れませんが)と思いますし、いろいろな人の感想を聞いてみたいですね。

(2006.5.28 ブログ再録)