『魔女の死んだ家』(☆2.6) 著者:篠田真由美

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昔、あたしは高い石の塀で囲まれた大きなおうちに、おかあさまとばあやとねえやと四人が暮らしていた。うちにはお客さまのない日の方がめずらしいくらい。お客さまたちのことを、おかあさまの「すうはい者」と呼ぶのだとばあやは教えてくれた。ある春のこと、おかあさまはピストルで殺された。その日のことをあたしはよく夢に見る。「魔女だからね。魔女は昔から火炙りに決まっているからね。」という男の人の声が聞こえる。すると急にあたしは自分の手の中に硬い冷たいピストルの感触を覚えるのだった…。充実の一途を辿る著者がくりひろげる耽美の世界、もつれた謎が鮮やかに解き明かされるエンディングをご堪能ください。 


Amazon紹介より

 

読み始めた時に、なんとなく日本というよりは外国の児童小説のような気がしました。
しかも、アンデルセンというよりはグリム童話あたりみたいな。
この2つはどう違うのか・・・聞かないで下さい。なんとなくですから。

これがどういう事かというと、つまり外国の小説が大の苦手である僕にとっては若干とっつきにくかったです。別に翻訳調の文章っていうわけじゃないので、決して読みづらいってわけじゃないです。
だけれども、独特(なのかな?)の文体が最後まで肌に合わなかったかも。

篠田さんとの相性は可も無く不可もなく。建築探偵桜井京介のシリーズは新作が出れば目を通してる訳で。この小説もそれに、特に比較的最近の作品に近いという感じがしました。
ちなみにこのシリーズも後になればなるほど好きじゃなくなってるんですよね~。

さらには、そこに芥川の『藪の中』(黒澤明監督『羅生門』の実質的な原作ですね。名著です。)を混ぜ合わせた展開に、多分子供は置いてけぼりだと思います。
つまりは、完全に篠田さんワールド全開で、純粋に自分が子供の頃に読みたかった小説を書き上げた感じになってます。
どちらかというと事件の謎よりも、人間心理の妖しさにウエイトが掛かった作品だと思います。
だから作中に出てくる密室トリックもある意味どうでもいい感じに仕上がってるんでしょう。
あくまで、登場人物の心理を描くだけの材料なんですから。

ただ、『藪の中』的な構造を持ちながら、イマイチそこが事件に与える影響が少ないのが難点で、読み終わった時に、あーそうですかーになっちゃいましたね。
この小説の点数に関しては、僕の趣味じゃなかったという部分が反映されてるので、逆に好きな人は好きな作品かもしれませんね。

(2006.5.14 ブログ再録)