『ぼくと未来屋の夏』(☆3.0) 著者:はやみねかおる

f:id:tairyodon:20190320213352j:plain


 

「未来を知りたくないかい?」六年生の夏休み前日、作家を夢みる風太は未来を百円で売る"未来屋"猫柳さんに呼びとめられた。風太の住む髪櫛町では、昔からかくれんぼをすると最後まで見つからない子がいるといわれる神隠しの森や首なし幽霊の話、人喰い小学校の噂、人魚の宝の謎が言い伝えられていた。宝物が隠されている!?そんなことを信じるほど、子どもじゃない。だけど猫柳さんの口から出ると、ひょっとすると本当に宝物があるんじゃないかって思えてくる。二人の自由研究の先に、どんな結果が待ちうけているのか、未来屋の猫柳さんには見えているのだろうか。 


Amazon紹介より

この直前に読んだ島田さんの『透明人間の納屋』に較べると、いい意味でも、悪い意味でも典型的なジュヴナイル作品だな~って思っちゃいます。
この辺は、やっぱりそれまでの経験の違いなんでしょうな。さすが、ジュヴナイル・ミステリーの第1人者だけはありますね。とはいっても、僕ははやみねさんの作品を読むのは初めてですが。

やっぱりこれだけ短いフレーズで、読者に簡潔なイメージを伝える。だからあまり奇をてらった設定は用いない。そんな感じの文章なので、非常にさくさく読めます。
出てくる内容も、怪しげな探偵、超常現象に怪奇現象、人喰い小学校、首なし幽霊、人魚の宝物、神隠し、暗号・・・もう、てんこ盛りです。
子供の頃にこんなフレーズに出会ってたらそれだけで楽しいかも。

これだけの要素を一本に集約させていく訳ですが、まあ正直強引な所はあります。
いろんなところで、いくらなんでもそこは想像飛躍しすぎだろ!!ってついつい突っ込んじゃったりして・・・。
でもまあ、猫柳さんは探偵ではなくて未来屋なのでいいのかな???

しかし、この猫柳さん、ホントに胡散臭い。
登場して最初の一言が、「未来を知りたくないかい?」ですよ。風太じゃなくても無視しますわな。
妙にフェミニストだし、その分男にはかなり冷たい。
小学生の風太にたかって、一度も奢ること無し。
でも、なんとなくいないと寂しくなるような、そんな気がしないでもないかな。
すべてが終わってみると、なんだかいい終わり方。最後にビックリエピソードも残してくれるし。

正直、ミステリーとしてはなんとも普通~な作品。
子供が読んでスラスラ楽しく読めるんだけど、でも逆にこれを読んだ子供が「ミステリーっておもしろいな」と思って他の本まで手を伸ばすかどうかは不安です。
んー、要するに普通のジュヴナイル小説って事ですか?

ちなみにお気に入りのフレーズ。
主人公であり、小説家を目指してる小学生風太君が、小説を書いて呟いた一言。

「この作品なら乱歩賞・・・いや、ひょっとするとメフィスト賞もねらえるかもしれない。」

メフィスト賞もついにここまで来たか。

(2006.5.13 ブログ再録)