『孤島パズル』(☆3.9) 著者:有栖川有栖

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51H6KT0B60L._AC_US400_FMwebp_QL65_.jpg


紅一点会員のマリアが提供した"余りに推理研的な"夏休み―旅費稼ぎのバイトに憂き身をやつし、江神部長以下三名、宝捜しパズルに挑むべく赴いた南海の孤島。バカンスに集う男女、わけありの三年前、連絡船の再来は五日後。第一夜は平穏裏に更けるが、折しも嵐の第二夜、漠とした不安感は唐突に痛ましい現実へと形を変える。晨星落々、青空に陽光が戻っても心は晴れない…。

Amazon紹介より

 

江神さんシリーズ第2弾。今回は望月&織田の漫才コンビはお休み(冒頭には出てきますが)で、そのかわりシリーズのヒロインとなるマリアが登場します。
有栖川さんらしく、マリアもなかなか魅力的ですね~。入部シーンなんかは本当にニヤリなのです。

この作品も前作に引き続きクローズド・サークル物で、ダイイングメッセージに代わって宝探しの要素も入ってます。
このモアイ像もどきが示す宝の地図の意味は結構簡単です。ほとんどの人が解けるんじゃないかな~。でもそこから発展させるのはちょっと難しいかも。

この作品も「読者への挑戦状」が挿入されてますが、なんとか解決できましたよ・・・。死ぬほど悩みましたけどね~。
でも、犯人に至るまでの過程は前作よりも遥かに整理されていて、解けた時の快感はなかなかのものでした。
3番目の被害者のダイイング・メッセージの処理の仕方はなかなか良かったです。

それにしても、この犯人の造詣はかわいそうだよな~。事件解決後に海に浮かぶボートの風景が悲しくて・・・。
後味が悪いとかそういうんじゃなくて、なんだか他にどうにかならなかったのかよと。こう思えるのも、一人一人のキャラがきちんと描かれてるからですかね。
江神さんがアリスに事件を解説するくだりの2人の会話のほろ苦さも絶品です。

ミステリとしては小粒かもしれないですが、かなり良心的な作品だと思います。
アリスが中原中也を詠むくだりは、本当に素敵でした・・・。


(2005.11.29 ブログ再録)