『月光ゲーム―Yの悲劇’88』(☆3.2) 著者:有栖川有栖

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夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々を、予想だにしない事態が待ち構えていた。山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われたように出没する殺人鬼! 有栖川有栖のデビュー長編。

Amazon紹介より

 

個人的に大好きな江神さんシリーズ第1弾であり、有栖川さんのデビュー作ですね。
サブタイトルにあるとおり、クイーンをかなり意識しています。でも方向性はレーンよりエラリイなんですけどね(笑)。

当時の新本格の新人の中でも文章力はいい方だと思います。ミス研メンバーのキャラもしっかりしているし、彼らの会話だけ拾っていってもそれなりに面白いのは、読者としては非常にありがたい事です。

この小説の最大の魅力はクイーンを意識したフェア精神溢れるプロット作りにあると思います。フィルム紛失の理由なんかは、あーなるほどなあ、と思いました。

ただ、この小説の最大の欠点もこのプロットにあるんだよね~。読者に対してフェアにあろうとする精神が強すぎたのか、証拠の数々が犯人を限定するだけの為だけに存在してしまった印象がありますね~。マッチのくだりなんかも、うーんちょっと都合良すぎじゃないかな~。犯行の動機なんかの描き方もちょっと中途半端かな。文章力は水準にあるだけに、もう少し工夫できたんじゃないのかなあ~。

で、タイトルにもあるダイイングメッセージ「Y」の謎。うーん、こりゃないだろ(笑)。かなりこじつけですわな、これは。
というか、少年漫画&小説によくあるすべての漢字にルビを振ったら、この小説どうなったのかしら。

とはいっても、決して大技を狙わずにきちんと組み立てられてるのは好感もてますし、ぜひとも2年に1冊ぐらいはシリーズ長編を刊行してほしいと思う今日この頃です。

 

(2005.11.25 ブログ再録)