貧しい下駄職人の息子平吉は、一家心中の企てが失敗した結果、サーカスに入団した。そこで師と仰ぐ丈吉に出会う。丈吉は手品や曲芸を平吉に仕込むが、ある日、忽然と姿を消してしまう。それからしばらく後、魔法のような手口で美術品を盗んでは世間を騒がせる謎の怪盗が出現した―昭和初期の風景のなか、明智探偵と怪人二十面相による数々の名勝負の真実が、いま二十面相の側から明らかにされる。痛快無比の冒険ロマン。
Amazon紹介より
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まず最初に。
厳密というと、この本はミステリではありません。でもタイトルから分かるとおり、乱歩の生み出した「怪人二十面相」の伝記的内容となってます。
で、いきなりですが、
傑作です!!
少年探偵団シリーズのパスティッシュの最高傑作だと思います。
なぜ、怪人二十面相は生まれたのか。何故犯罪を犯すのにあんな目立つ行動を取るのか、そして明智と二十面相は何故年を取らないのか。総ての回答はここにあります。
もちろんその回答は、劇作家でもある北村想が創造した贋作ですが、その理由たるや実に説得力ある回答なのです。
乱歩を読んだ事が無い人ももちろん楽しめますが、小さい頃に少年探偵団に嵌った人には、思わずニヤットさせられる記述が溢れていて、あの事件を二十面相側から見たらこうなるのかと、ついつい感心してしまいます。
なかには『D坂の殺人事件』や『パノラマ島奇談』に言及する台詞なんかも出てきて、乱歩好きにはそんな部分を探す楽しみもありますよ。
二十面相側からの視点から見ている為、明智の人物像の描き方が島田壮司の『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』におけるホームズみたいな印象があるのが若干気になりますし、小林少年もどっちかというと悪餓鬼なんですが、ラストで小林少年が語る明智への思い入れは、物語をさらに膨らませてくれて、続編『青銅の魔人―怪人二十面相・伝』に大きな期待を残してくれます。
とにかく小さい頃に『少年探偵団』シリーズをわくわくして読んだ人には、必読の1冊です。
ということで、採点は 4.5点!!
(2005.10.1 ブログ再録)