『発光妖精とモスラ』 著者:中村真一郎・福永武彦・堀田善衛


中村真一郎福永武彦堀田善衛による原作と、脚本第1稿、さらには脚本決定稿を収録したモスラファン必読の書。

yahooブックス紹介より

ザ・ピーナッツ扮する小美人が歌う「モスラや~、モスラ~♪@==W"`O%{OR{WOL{{WERLW~♪(聞き取れん)」でお馴染みのモスラである。
ある程度年齢が上の人、あるいは怪獣映画が好きな人で、モスラを知らない人はまあほとんどいないと思う。
しかしながら、その原作が中村真一郎福永武彦堀田善衛の3人の文学者による共作だということはあまり知られてないのではないのだろうか。

この原作、映画を前提に書かれたというだけあって小説というよりはシノプスに近いものがある。
もちろんそこにはそれぞれの作家の持ち味は出ているものの、やはり気になるのは映画との差異。
まず映画に出てくる悪役の出身国がロシリカからロリシカに変わっている。これはやはりロシリカが、ロシアとアメリカをもじったものだからだと思う(笑)。
さらに、映画では東京タワーに繭をつくったモスラは原作では国会議事堂に(確か平成版は国会議事堂だったような)、ラストの場面も映画では火山口で悪役を倒したモスラはただ宇宙に旅立つだけだったが、小説では悪役の街をぶっ壊した後反宇宙という別世界に消えていく(平成版も確か・・・)。
他にも原作では小美人はもっと大きかったし、4人もいたりするのです(笑)。

こうして読んで見ると、原作から第1稿、さらには決定稿までの変化にいろいろと空想を遊ばせる事が出来ると同時に、3人の作家による先見性を感じることもできる。
中村真一郎の後書きによると、

・・・さて、上陸した芋虫が国会議事堂の上にまゆを作ってしまう。

 それを排除するために、自衛隊が出動となるのだが、私たち三人はそこで、日米安保条約を持ち出し、この条約によって、日本政府はアメリカ軍に出動を要請し、議事堂のまわりは安保反対の群集がとり巻く。ここは一部、ニュース映画の実写を借用する。一方、ニューヨークの国連本部では、ソ連日米安保の発動に拒否権を申し出て、こちらも緊張した論争場面がつづく。映画の画面は東京の国会周辺とニューヨークの国連会議場とをカットバックで次第に激しく往来し、昂奮が絶頂に達したところで、まゆが破れて蛾が議事堂の頂上から飛び立つというのがラスト・シーンとなる、という私たちの案は、田中さんの独立プロの映画だなぁという一語によってあっさりと否定されて、九州の噴火山の麓が最終場面に選ばれることとなった。

ここだけ読むと、モスライラクの違いはあるものの、先年起こった自衛隊の海外派遣を彷彿させるような気がしませんか。
この映画は共同出資にアメリカの映画会社があったこともあって、さすがにこれは危険と判断させられたのだろうが(笑)、実に皮肉が利いているよな気がする。
またラストの反宇宙という発想も、当時の日本映画の中においては中々に珍しい発想だったと思うのだがどうだろう。

まあ決しておもしろい本とはいえないかもしれませんが、怪獣映画、またはモスラファンにとっては必読の書であると思う(笑)。

ちなみに映画でフランキー堺が演じた主人公の名前、福田善一郎は三人の名前をもじったものだし、モスラという名前は英語表記のモス(moth)にゴジラのラをくっつけたものだそうな。。。