たいりょうのちょっと一息

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『禁じられたソナタ』(☆4.5) 著者:赤川次郎

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飛岡音楽院の院長・飛岡栄一郎の臨終の際、「決して弾いてはならない」という謎の言葉とともに、「送別のソナタ」と題する楽譜を孫娘の有紀子に遺した。学院の運営を栄一郎に任されてきた園井は、その曲の存在と恐ろしさを知っているようだった。遺言どおり、楽譜をしまいこんだ有紀子だったが、それが密かに持ち出され、幻のソナタが奏でられたときから、有紀子の回りでは奇怪な事件が起こりはじめる!!

故郷に戻った園井は、透明で少し粘り気のある液体の入った小さなびんを受けとった。飛岡音楽院の院長には、有紀子の姉・真由子が就任。これに対して、学院の実権を握ろうとした事務長の妻・久恵だったが、謎の男により、無数のネズミが床を埋めつくすビルの地下室に監禁されてしまう。一方、「送別のソナタ」の虜となった桐谷は、次第に常軌を逸していく。さらに事件が起こるなか、ついに明かされる驚愕の事実とは・・・

 

実は今読んでいるアンソロジーの読破に妙に時間がかかってるうえ、父親が風邪で寝込んでいる為その看病もありなかなか読書記事が更新できません。
ということで、昔読んだ本から1冊紹介することにしました。

 

赤川さんといえば初期の本格ミステリ(「三毛猫ホームズの推理」、「幽霊列車」)や、数多くのシリーズ物(三毛猫ホームズ三姉妹探偵団、爽香シリーズなど)など数多くの作品を発表しつつ、なおかつその殆どが現役で入手可能という化物作家さんですが、一方でモダン・ホラー、あるいはゴシック・ホラー(すいません、区別はわかりません)のジャンルでもなかなか読み応えのある作品を発表しています。

 

その中でも、質・量ともに上位にランクできるだろうと思うのがこの作品です。
前院長によって封印されたソナタが弾かれるたびに引き起こされる怪異の数々。暗闇を蠢く正体不明の存在は限りなくS・キングのノリに近いです。
ただキングに較べると、赤川さんの文章は簡潔にして行間の隙間をきちんと感じさせるといいますか、なんだかんだいっても読ませる本を書かせるという意味では化物クラスの作家さんですね。もってる技量の高さを感じさせますね~。

 

また空気で恐怖を感じさせる瞬間、直接的な表現で恐怖を煽る場面のバランス・見せかたがいいんですよね~。
特に壊れゆく人間、取り込まれていく人間の心理描写は説得力抜群。それがあるからホラー特有の荒唐無稽な部分がきちんと恐怖に転換していますね。
ラスト場面での救いの無さもまた強烈でした。

 

改めて思い返すと、僕の好きな赤川次郎作品というと、推理系よりもホラー系に寄った作品の方が好きかもしれないっす。
『白い雨』『夜』『「魔女たちのたそがれ』『魔女たちの長い眠り』なんかも細かい内容は忘れてるんですけど、とにかくなんともいえない怖さは残っています。
「どの本も内容同じじゃん!!」と批判されることも多い氏。確かにそういう部分は否定できませんが、それでも読ませてしまうという技量はやっぱり生半可じゃないですよ。



採点   4.5

(2006.11.28 ブログ再録)