『文学賞メッタ斬り!2007年度版』(☆3.5)



文学賞メッタ斬り!シリーズ」第3弾。スペシャルゲストに作家中原昌也を迎えた爆笑座談会や、メッタ式文学賞授賞の傾向と対策など、盛りだくさんの内容で、本読み必読です。 

公募新人賞とそれ以外の文学賞とに分け、主要各賞について最新受賞作と最近の傾向を分析。選考の謎、授賞のロジック、「選評」評等、溢れ出る小説愛で益々冴え渡る文学放談。この一年の文学賞受賞作と周辺事情がわかる。 

yahoo紹介より

文学賞メッタ斬り』、『文学賞メッタ斬り!リターンズ』に続く第3弾。
お馴染みのレギュラー企画(?)に加え、前作の島田雅彦に続き今回は中原昌也を迎えた討論会。
そしてこの度直木賞審査員を退任した「ツモ爺」こと津本陽を称え(?)氏の選評の歴史を振り返る、「津本陽、さようなら」など企画も盛りだくさん(笑)。

相変わらず読ませる本。前作は第1作よりパワーが落ちたな~と思った。
それは今回も変わらないとは思うのだが、前回よりはフレンドリーな印象。知ってる本が多かったからかなあ~。

冒頭を飾る討論会。島田氏の時に比べると、純粋に自分の文筆にかける意気込みが伝わってくる中原氏が素敵。
池澤夏樹の選評に理路整然としかし激しく噛み付く姿勢は、もろ共感です。
たしかにあの選評はないよな~。
中原さん、まだまだ芥川賞いけまっせん。

第2・5章の新人賞の傾向、ならびに現在の文学賞の動向を伺うには最適の章立て。
ただしあくまで大森・豊崎氏の独断と偏見ですが(笑)。
文藝賞綿矢りさ(『インストール』以降)、若い女性に挙げなきゃいけない脅迫観念に駆られているとか(その理由が打ち上げやパーティーで可愛がる為というのが^^;;)、選考会が開かれる会場の料金と石原都知事の交際費との因果関係など、どうでもいいけど笑えてしまえます。
また『容疑者Xの献身』の一連の騒動と本格ミステリ大賞の受賞に関して、これを批判した笠井潔本格ミステリ作家クラブ探偵小説研究会の一線から退くそうな。
あの騒動に火をつけた二階堂さんは、一体何を思っているのでしょう(笑)。

また恒例の芥川賞直木賞の予想、ならび結果発表。
今回お二人の予想。芥川賞の本命に佐川光晴、対抗に柴崎友香直木賞は本命に北村薫、対抗は白石一文さんでした。
そして結果は芥川賞青山七恵直木賞は受賞作無し。
青山さんについては予想でものすごく酷評してらして(無印)、その結果はお二人にたいそうショックを与えておりました。
ちなみにこれ、受賞作が掲載された『文芸春秋』を買ってあるんですが、未だに読んでおりません。まあ、そのうちに。。。
記事では大森さんが135回の候補に貫井徳郎さんが挙がったので、今回は奥さんの加納朋子(『モノレールねこ』)が候補に挙がるんじゃないかと思ってたそうな。
なんやねん、その予想の仕方は(笑)。

動向的には三島由紀夫賞が受賞作の質として高評価を得てましたが、これを読んだあとに発表された最新受賞作が佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』。ううむ、低評価しただけに複雑な気分(笑)。
ちなみに今回も都知事、ジュンちゃん(渡辺淳一)は飛ばしまくりですがテルちゃんは登場してませんでした。う~む、残念。。。

さてハイライトはやっぱり『津本陽、さようなら』でしょう。
この企画の為に、ツモ爺の各文学賞の選評に目を通すに飽き足らず、ツモ爺が初めて直木賞に候補になった時や受賞した時の選考委員の選評にまで目を通すという徹底ぶり(笑)。ちなみに当時の選考委員のメンバーがすごいです。海音寺潮五郎柴田錬三郎水上勉松本清張源氏鶏太五木寛之・・・そりゃツモ爺も勘違いしますな(笑)。
さらにはツモ爺の選評にしばし登場する「流露感」(流れ出て現れること。気持ちなどが隠れずにあらわれる。)のルーツが、自身の『丘の家』が受賞した時の選評にあったと判明するにあたってはツモ爺、可愛すぎるってなもんです。
まあ、すべてのオチが無断引用問題にいってしまうのは自業自得でしょうが。
ツモ爺にはこれからも文学賞の審査員を続けてもらって、素敵な選評を書いて欲しいものです(ただしマイナーな賞で。。。)。

最後に今年度の『メッタ斬り大賞』は『安徳天皇漂海記』
僕自身の評価はあまり高くつけなかったものの、受賞的には納得ですね。

大森さん、豊崎さん。
来年もお待ちしております♪

採点  3.5