『アッシュベイビー』(☆4.0) 著者:金原ひとみ

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蛇にピアス』を凌ぐ衝撃の第2作!赤ん坊、変態、好きな男。主人公アヤはこの三人に囲まれ、ただひたすらに愛しい死を求め続ける。愛しい死、それは愛する人の与えてくれる死。彼女は今日も死を待っている。

 

金原ひとみさんです。芥川賞受賞後第1作ですね。受賞作『蛇とピアス』はそんなに嫌いじゃありませんでした。
で、著者曰く受賞後最初の作品ということで好きに書かせてもらったらしい。

 

いやあ~、強烈です^^;;;
マ○コではじまりマ○コで始まる小説。作中では当然伏せ字無し。
とにかく主人公のアヤは最初から最後までチ○コマ○コ連発、セックスとオナニーの嵐。
さらにはルームシェアしている男性は極度のペドフィリア。ちなみにペドフィリアというのは俗称でいうところの小児性愛、いわゆるロリコンのもっと年齢が下がったもので、この男性ホクトはどこからか連れてきた赤ん坊のマ○コにチ○コをこすり付けてイッてしまう真性の変態。
さいごは兎や鶏にも突っ込んでイッてしまいます(おいおい)。

 

正直なところ感想に非常に困る作品なのは間違いない。とにかく賛否両論わかれてるみたいだし。
ただ僕自身はどちらかというと肯定派なのかもしれません。
主人公アヤは読む限りではジコチューで強度の自虐思考で、さらにはとにかくセックスを求めてしまうキャバクラ嬢
こう書くとはっきりいってとんでもない女性ですが、彼女のとってセックス→イクということは逝く→死と表裏一体な感じがしました。
作中彼女が自分の足を自分で刺して、その傷口をマ○コに例える描写があります。これなんかはまさにその典型であると思うし、彼女が好きになった男性村野さんに望むのはセックスしながら殺される事、つまりは愛する人に殺される事を望んでいるんですな。

 

結局それはそれまでの人生、人に心を開かずに生きてきた、さらには人に心を開かれずに生きてきたアヤにとって、殺されるというのは自分の人生に干渉してもらえる→自分に対して心を開いてもらえるという図式が成り立ってるわけで、村野さんに対してとにかくひたすら「好き」という言葉も吐き続けるのもその瞬間自分自身の存在が誰かに干渉(人を愛するというカタチ)されている事の確認作業なんだろうなと想像できなくもない。
この主人公達の思考というのは造型としては極端ながらも、でも誰もが感じるものがベースには存在しているわけで、ただのトンデモ小説には留まってない気がします。

 

文章的にも一見書き殴ってるようにしか感じられないフレーズの組み合わせではあるんですが、読んでいるとすべて彼女の計算の内なんだと思うわけで、そういう意味では20歳(初出当時)でこれをかけるのはちょっと凄いかもしれない。

 

まあ、ホクト君については理解しようが無い部分はあるし、ダメな人が読んだらただひたすら不快になること請け合いですけどね(笑)。
いやあこういう作品こそ慎ちゃん(石原慎太郎)やテルちゃん(宮本輝)、もしく直木賞選考委員ですがジュンちゃん(渡辺淳一)に読んでもらいたい。
特にジュンちゃんの薄っぺらいセックスシーンよりは何倍も濃い密度が感じられると思うけどね。

 

採点   4.0

(2006.11.3 ブログ再録)