『黄金蝶ひとり』(☆4.5) 著者:太田忠司

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五年生の夏休み、洸は物心がついてから一度も会っていない祖父・白木義明の住む茶木村で過ごすことになった。アサギマダラという蝶が群れとび、鍾乳洞があり、豊かな自然が残る村には、山を守る"テツ"がいるという。「茶木牧場&白木万能学研究所」なる看板をかかげた祖父は、あらゆることの先生として、村民から尊敬されていた。だが、なにか皆に秘密にしていることがありそうだ。村にかくされているという宝と関係があるのか…。ある日とつぜん祖父が姿を消した。茶木村を観光地化しようと前村長の不良息子が会社社長となって戻ってきたのと、関係があるのだろうか。彼の真の狙いは村の宝にあるのでは…。 


Amazon紹介より

これまたやられましたね~。
正直、ミステリというほど深い謎があるわけでもなく、どちらかというと「ひと夏の冒険」という方が正しいかな。後半はちょっとSF的要素が出てくるし。

でも、これはこれでいいじゃん!!
洸をはじめ、その両親や祖父の義明、山守の『テツ』、3色の帽子を被った謎の3人組・・・
この登場人物たちがものすごく魅力的。
山奥の、これまた山奥に隠された大きな謎を突き止める為、またこの村を守るために一生懸命な行動になんだか心が暖かくなります。

また本の装丁、というか作りがまたいいんですよね~。
冒頭で、これが別の人間により書かれた本(そういう設定なんです)であり、この小説の真の作者は誰だ?っていう謎掛けがされます・・。
これに関しては正直もう少し分かりやすいヒントが欲しいよ~と思わなくもないですが(一応ミステリでも見かける隠し方のヒントがあるんですけど、こりゃ気付かないでしょ~)、それすらも物語の雰囲気作りに貢献しているというか。

特に後半のオレンジ色のページにおける後日談で、実はこの物語が○○ストーリー(どんなストーリーかは読んで確かめて下さい)だったのがわかり、ちょっと幸せな気分になれます。
さらには、ちょっとした謎を残したままで終わり(この謎が、またミステリファンはにやりとさせられます。だからこそこのタイトルなんでしょうね)、知りたければもっとミステリを読んでみなさいって、お言葉がいただけます。

ラストの一行まで楽しめる、かなり出来のいい(著者の中でも一番かも)小説だと思います。
こんな本を読んだら、もっともっと本を読みたくなるんじゃないかな~。

(2006.5.10 ブログ再録)