『ON 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』(☆2.5) 著者:内藤了

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まずはあらすじ。

奇妙で凄惨な自死事件が続いた。被害者たちは、かつて自分が行った殺人と同じ手口で命を絶っていく。誰かが彼らを遠隔操作して、自殺に見せかけて殺しているのか?新人刑事の藤堂比奈子らは事件を追うが、捜査の途中でなぜか自死事件の画像がネットに流出してしまう。やがて浮かび上がる未解決の幼女惨殺事件。いったい犯人の目的とは?
第21回日本ホラー小説大賞読者賞に輝く新しいタイプのホラーミステリ!

Amazon用あらすじより

 波留主演の連ドラを見てて、原作も少し気になり読んで見ることに。いやぁ、このシリーズ、というか著者も正直ドラマを見るまでは知りませんでした。勉強不足です。

 読み始めてすぐに分かるのが、原作とドラマでは主役の藤堂比奈子のキャラクターが全然違うということ。ドラマ版では異常事件への異常な執着心、あるいは時折感情が欠落してるんじゃないかと疑わせるサイコパス的な設定でしたが、原作では普通の人でした。
 まぁ、七味唐辛子を掛けるのは一緒だったんですが、ドラマ版ほどに何にでも美味しいからかけるという訳ではなかったし、でもそうすると七味唐辛子の意味はあんまり無いんじゃないか?という気がしなくもないです。

 それにしても・・・う~ん、文章が合わないなぁ。なんだろう、ムチャクチャおかしいという訳ではないんだけど、読みづらい。字の文章に不必要に思わせる程説明表現が多いく、あまりに細かいところまで説明しすぎてテンポが悪くなってる。さらには三人称の視点、おそらく比奈子から見た三人称単視点になると思いますが、ところどころブレがあったりする。せめて地の文の特定の人物だけアダ名を使わなかったら、もっと読みやすい気がするんですけどね~。
 会話に関しても、会話感を強調しすぎた言葉選びをして雰囲気を出そうとしてるのが、逆に居心地が悪い。まぁ、この辺は好みもあるだろうしなんともいえないですけど。

 ミステリとしての引力は十分あって、人間として明らかに不可能な自死事件の連続。中にはカメラに録画されていたり刑事の目の前で起きたりするので、こんな大風呂敷広げて大丈夫かという感じ。冒頭の少女の死体の凄惨さも映像では放送コード引っ掛かりそうで、好きな人はたまらないかもしれないです。このあたりの凄惨さはホラーなのかもしれません。ただし、純粋にミステリよりホラーのウエイトが大きいかというそうでもなく、どうだこの殺人はサイコ過ぎてホラーだろ?っていう著者の主張が透けて見えるような気がします(気のせい?)

 ただミステリーとしての完成度が高いかというと、いかんせん早い段階で犯人が想像ついてします。明らかに著者が狙ってぼやかそうとしてるのに、技量が追いついていないせいなのか、逆に露骨に怪しく見えてしまいます。そうなると、トリックもなんとなくこっちの方向性なのかなと想像がついてきます。ただ、トリックの方向性は分かっても実行方法についてはさすがに斜め上を行き過ぎて、実現可能かどうかはなんともいえません。

 とにかく作品全体として狙いや方向性は悪く無いと思うのですが、著者の狙った捻りが多分思ったより効果を発揮しておらず、そうすると構成やヒントの散りばめ方は非常にオーソドックスな分、意外性を感じることが出来ないのが最大の難点かなと。さらに文章が合わなければかなり読むのがしんどいと思います。逆を言えばそこが上手くいけばもっと面白く読めるのかもしれないな、と思います。

 とりあえず、続編も同時に買ったので、そこまでは読んでみようと思います。で、新しいタイプのホラーミステリーって、何処の部分を指してるんだろう。

採点  ☆2.5