『AID~ 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』(☆2.8) 著者:内藤了

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まずはあらすじ。

 都内の霊園で、腐乱自殺死体が爆発するという事件が起こる。ネットにアップされていた死体の動画には、なぜか「周期ゼミ」というタイトルが付けられていた。それを皮切りに続々と発生する異常な自殺事件。
 捜査に乗り出した八王子西署の藤堂比奈子ら「猟奇犯罪捜査班」は、自殺志願者が集うサイトがあることを突き止める。その背後には「AID」という存在が関係しているらしいのだが…。
 新しいタイプの警察小説、第3弾!

徳間文庫あらすじより

 猟奇犯罪捜査官・藤堂比奈子シリーズ第3弾。ドラマの方も結構好きで見てるけど、先に原作をきちんと読んでおきたいので、頑張って追いかけます。

 冒頭、検視官の”死神女史”こと石上妙子の過去のエピソードが描かれ、その後発端となる腐乱死体爆破事件の死体発見の場面。この部分を読んだだけでもシリーズ第1弾と比べると、読みやすくなってるなぁと感じます。

 基本的には過去作と同様に、事件のミッシング・リンクを探すところに重きが置かれてるのかなと。冒頭の事件での死者が死ぬまでの姿がネットにアップされるという展開も「ON~」の事件と似てるな、と感じさせてくれます。
 それと連続毒物自殺(?)事件との対比はくっきりとしてます。前者は緩やかな死の経過(それはそれで嫌ですが)、後者はむしろ毒物として使われたパラコートの強烈な効果が派手に描かれてます。
 しかしこのパラコートっていうのは怖い。胃や内臓が爛れて更には肺線維症になって呼吸不全になって、しかも特効薬も無い。スプーン1杯で助かることも無く確実に死ぬそうで・・嫌ですね~。そういえば昔、日本でもパラコートが混入されたジュースを飲んで死亡する連続毒殺事件がありましたが、そのあたりも作中でかなり際どいヒントとして触れられてます。
 そんな2パターンの死亡事件の毛色の違いは、事件のキーワードの一つとなってきてますが、このあたりの処理も小慣れてきてる感じがあります。

 ただ、冒頭の妙子のエピソードも含めて処理されてる伏線の食い合わせはあまりよくないのかなぁ。リンクそのものはきちんとしてるんだけど、リンクの処理の過程がイマイチみたいな。特にパラコートに関しては、実際の事件との絡みだけで生かされてる感じがします。犯人の正体についてもシリーズ通して同じパターンな感じで結構想像が付きやすい分、犯行動機の部分にしっくりこれるかどうかで、この作品の好き嫌いが分かれるかなぁ。
 レギュラーの登場人物のキャラクターもこのあたりになるとかなり固まってるにも関わらず、あまり個性が出てこないというのも、このシリーズの弱さなのかなと思います。
 
 それにしても、新しいタイプの警察小説というのがどこをさしてるのか相変わらずよく分からない。
 


採点  ☆2.8