たいりょうのちょっと一息

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『ZOO』(☆3.8) 著者:乙一

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いま最も注目される若手ナンバーワン、乙一の魅力爆発の短編集。毎日届く恋人の腐乱死体の写真。彼女を殺したのは誰か?「犯人探し」に奔走する男を描く表題作他、書き下ろし新作を含む10編収録。 Yahoo紹介

 

いままで読んだ(といっても2冊だけですが)乙一作品の中ではダークな部分が濃くでていて好き嫌いが分かれそう。さらには収録されてる短編の中でもそれがはっきりと分かれるんじゃないかと。
'''一般的に受けがいいのは「陽だまりの詩」あたりのような気がしますが。
とりあえず各短編の寸評を。ちなみに順番は収録順ではなく、僕の好きな順番になってますので、あわせて参考にしてみてください。


「神の言葉」

 

言った事が現実になってしまうという、ドラえもんの道具的な言霊を持った少年の話。最初、ラストの真実がイマイチ理解できなかったのですが、それがわかるとほんとゾッとしますね~。乙一真骨頂?

 

「冷たい森の白い家」

 

外枠だけとると絵本にできそうなお話のような気もするのですが、内枠はかなりダーク。個人的に淡々とした文章がもたらす効果という意味で、相当密度の濃い作品だと印象に残りました。ただ主人公の顔の設定はもう少しなにかあればなという不満も。

 

「SO-far そ・ふぁー」

 

これはわりとユーモラスな出だしがラストで一転する作品。せつない系乙一さんが好きな人ほど最後に愕然とするような気がします。個人的にはこの発想はかなり好み。

 

「陽だまりの詩」

 

これもまたある意味漫画的な世界観(最近だと手塚治虫原作・浦沢直樹『PLUTO』のエピソードに出てきそう)、もしくは古典SFに近い作品。ただストーリーの切なさでは収録作品中1番だと思うので、好きな人も多いんじゃないかな。僕も好きです。普遍的な物語を美しくする言葉選びのセンスが感じられました。

 

「カザリとヨーコ」

 

うん、よく出来てると思います。正直展開や結末そのものは少女漫画的で目新しいものは無いと思いますが、世界観を支える言葉やヨーコの考え方はまさに乙一流というべき個性を感じます。前向きなんだか後ろ向きなんだか分からん結末も好きかな。

 

「血液を探せ」

 

これまた探せば同じような設定の作品がありそう。ただこういうユーモラスな乙一さんを読んだ事が無かったのでそういう意味では新鮮。ただ一番個性がでてるのが90歳の医師だけで、それ以外の登場人物の設定がいまいち。ラストの死に際はいいんですけど、もう少し長くしてもいいんじゃないかと。

 

「SEVEN ROOMS」

 

なんとも評価がしにくいです、これ。殺人鬼の目的や正体がわからないとか、グロいとか、ラストが哀しすぎるとか、そんなんじゃなくてなんだろう・・・・ほっぽり出された感じと言うべきか・・・。うーん。

 

「ZOO」

 

ある意味ストーリーテラーとしての技量をみせてくれてはいますが、逆に仕掛けの部分が弱くなってしまってるかな~。だからラストがちょっとピンとこない。こういう話は大好きなんですけど。

 

「落ちる飛行機の中で」

 

これまたらしからぬ(?)作品のような。話の展開や空き缶の設定は面白いし、ハイジャックされた飛行機の中で交わされる会話としてはかなりブラックユーモア的な雰囲気も持ってて。ただラストのオチへの説得力という意味では少し弱い気がしますね。

 

「Closet」

 

まっとうなミステリすぎて、本編から浮き上がってる作品。騙りの面白さを楽しむ作品ではありますが、結末が想像しやすいだけに正直それほど・・・。


短編集としては、いろいろな乙一氏の姿が見えてファンは楽しめるし、完成度の高い作品が多いのでファンじゃない人も面白いと思えると思います。ただ、作品を読み終わった時に、それだけで終わってしまい読後感が残る作品があまりありませんでした。
レベルとしては、もうこれだけ書ければ十分じゃん!!とは思うんですが、乙一氏にはもう一歩先に行ける力はあると思うので、正直「GOTH」ほどにはきませんでした。


採点   3.8

(2006.6.22 ブログ再録)