2018年マイ・ベスト

 さて、今年もいよいよ大晦日です。

 今年一年も色々なことがありました。昨年は父を亡くしましたが、そのころからガンの経過観察中だった母がついに抗癌剤治療をしなくてはいけなくなり、年の後半は色々と大変でした。おかげさまで治療は順調に進み、年越しも無事一緒に迎えることができました。

 私事でも、職場こそ変わらないものの急な人事異動に伴い、肩書が変更になり、未経験の新しい人に今までの自分の仕事を教えながら、新しい立場の仕事をしないといけないということで仕事量が2倍に。さらには、訪問先で刃物での傷害事件の現場に出くわしたりたり、引き抜きの話が来たりと、色々とありました。

 おそらく今年度末で今の出向が終わり。そこからどうなるかは分かりませんが、また来年も忙しくなりそうな予感です。

 と、前置きはここまでにして、今年のランキングです。
 今年は映画を観る年にしようということで、例年になく映画館に通ったり、DVDや動画配信サービスで観たりと、一年で観た映画総数は過去最高。その代償として本が全く読めず、積ん読だけが増えるという状態でございました。


という事で、まずは恒例ミステリ部門。

1. 「グラスバードは還らない」著者:市川憂人
2. 「幻の女」(新訳)著者:ウイリアムアイリッシュ
3. 「盤上の向日葵」著者:柚月裕子
4. 「マツリカ・マトリョシカ」著者:相沢沙呼
5. 「マツリカ・マハリタ」著者:相沢沙呼
6. 「ガラスの殺意」著者:秋吉理香子
7. 「犯罪者(上・下)」著者:太田愛
8. 「碆霊の如き祀るもの」著者:三津田信三
9. 「沈黙のパレード」著者:東野圭吾
10.「少女を殺す100の方法」著者:白井智之

簡単に振り返り。
10位は、もうこれぞ白井さん(短編しか読んだことないですが)というエログロとミステリが、異様な純度で結合したバラエティに富んだ作品でした。読む人選びますけどね^^;;
9位は東野さんのガリレオシリーズ。ガリレオシリーズの長編は総じてレベルが高いです。過去のシリーズ長編と比べると、、、というところはありますが、最近の東野さんの中ではダントツの読み応えでは。
8位のは待ちに待った刀城言耶シリーズの最新刊。終盤挙げられる謎の数の強引さ、事件によって凝り具合に落差はありましたが、竹やぶの密室とラストの衝撃はさすがです。
7位は初の太田さん。本格というより、サスペンスとしてエンターテイメント性の高さが圧巻。なにより文庫上下巻で1000ページという分量をまったく感じさせませんでした。
6位はイヤミス系作家秋吉さん。とはいってもこの小説はイヤミスらしさはないというか、むしろ難しい設定を用いつつ、予想外にぐっとくる結末が印象に残ります。とりあえず泣きました。
4、5位は相沢さんのマツリカさんシリーズ。とりあえずマツリカさんと柴山くんの関係がとにかくツボなわけですが、それだけじゃなくてミステリとしても青春小説としてもクオリティの高さが印象に残りました。とにかく早く次を・・・。
3位は柚月さん。「孤狼の血」もその続編も読んでなくこれがお初なんですが、とにかく重厚。著者が意識した「砂の器」(小説としては超えていると思います)のオマージュに留まらない、社会派ミステリの傑作。将棋がよくわからなくてもぜひ読んでほしい作品です。
2位はいきなり古典ミステリの新訳。そういえば去年もクリスティを1位にしましたねぇ。それはともかく初読では無いとおもうけど、ほんとに覚えていなかった。なぜこれを覚えていないんだというほか無いです。旧訳の名文を敢えてそのまま使用した冒頭、その英断も印象的。やっぱり名作は残るものです。
そして1位は市川さん。これがシリーズ3作目、すべてクローズド・サークルをテーマに同じ手法の作品ばかりですが、タイトルも含めてミステリの純度にますます磨きが掛かってます。できればシリーズを追って読んでほしいところはありますが、それだけの価値はある作品だと思います。


「いやあ、、、我ながら新刊を読んでいないなぁ~。いや、結構新刊は買ってるんですけど、なかなか読む手がそこまで回らないというか。それなら、図書館で借りるか、古本になって買えという気もするんですが、なんか買っちゃうんですよね・・・。」(去年のベスト記事のコメント)

 今年もまったく同じです。積ん読は相変わらず消化できないまま増えていくし、断捨離を実行しても全く本棚から本が減らないという悪循環。来年はもっと片付けていきたいです。

 ランクインしなかった作品・作家さんでは、倉木さんの充実ぶりが印象に残ります。今年読んだ本はどれも面白かったし。また、あまりみなさんのランキングにはあがりませんが、岩木一麻さんは医療系ミステリとして面白い存在になりつつあるなと思います。
 相変わらず小説としてはまったく面白くないのに高田さんは新刊を即読みしてる完全に趣味が偏ってきてます。

さて次に非ミステリ系・エッセイ系の作品を。
こちらはそもそも冊数読んでないので、印象に残った本を2冊。

○ 「星の子」著者:今村夏子
○「夜行」著者:森見登美彦


 森見さんはもうほんとうに久しぶりなんですが、これはやられました。ユーモアよりもどこか不穏な空気が全体に漂って惹きつけられます。そしてラストの本当に閉じたか閉じないかわからない終わり方、好きだなぁ。
 今村さんは去年読んだ「あひる」も良かったけど、また一つレベルが上ったというか、日常と非日常は表裏一体、紙一重なんだよと教えてくれるというか、どこかズレてる登場人物が描き出す物語の不思議なリアリティがすごい。新刊が出たらすぐに読みたい作家さんになってるかもしれないです。

 とりあえず来年は今回ってきてる図書館本からスタートダッシュをかけて、年末から手をつけている久しぶりのキングだったり、新訳系の作品をなんとか片付けていきたい。あとは、池澤夏樹さんの世界&日本文学全集もなんとか・・・。 
 あ、「蜜蜂と遠雷」今年も読めなかった・・・・


 続いて映画ランキング。今年は劇場&自宅で未見の作品約200本鑑賞。ということで、今年は邦画・洋画でランキングを分けたいと。

 まずは新作邦画編。

1. 「花筐」
2. 「来る」
3. 「勝手にふるえてろ」
4. 「ミスミソウ」
5. 「ちはやふる〜結び〜」
6. 「今夜、ロマンス劇場へ」
7. 「50回目のファーストキス」
8. 「カメラを止めるな」
9. 「いぬやしき」
10.「若おかみは小学生」

10位は子供向けアニメと侮るなかれ。人の死という、実に深いテーマを扱った良作。
9位は邦画のSFアクション系としては久しぶりの快作。クライマックのバトルシーンも圧巻だし、どこまでも哀愁漂う木梨憲武と、罪悪感という言葉を置き忘れたような佐藤健の殺戮っぷりにしびれます。
8位は今年度最大の話題作。手法自体はそこまで斬新ではないけど、それをキチンと見せるレベルで展開したからこそ驚ける。インディーズだからこそできる映画だと。
7位は胸キュンラブストーリーのリメイク。どこまでいってもキュートな長澤まさみ、彼女を起用した時点で成功が約束された。福田組らしい笑いもそこまで作品を邪魔していない。
6位は往年の撮影所を舞台にしたラブストーリー。どこまで美しい綾瀬はるか、彼女を起用した時点で成功は約束された。坂口健太郎の等身大な存在感も良いし、すべてがひとつになるクライマックスは泣ける。
5位は、青春かるた映画完結編。この映画ができたことで前作の「下の句」の物足りなさが解消される。ここまで王道の青春映画は本当に久しぶりなんじゃないだろうか。広瀬すずをはじめとしたキャスティングが皆眩しいが、中でも賀来賢人の存在感は偉大。
4位はスプラッタ復讐系漫画の実写化。ところどころチープさは感じさせるし、内容的に賛否両論だろうけど、この静かに燃え上がるテンションの高さは異様。個人的にはすごく好き。
3位は綿矢りさ原作の、松岡茉優松岡茉優による松岡茉優の為の映画。妄想爆発系ヒロインの圧巻のセリフ量、現実と妄想を飛び跳ねる松岡茉優の素晴らしさにひれ伏すしかありません。
2位は、王道民俗学系ホラーのあの原作を、「告白」「渇き」の中島哲也監督がまさかのテンションアゲアゲ映画にした会心作。どこまで薄っぺらい妻夫木聡、これまでのイメージをひっくり返す黒木華の母親っぷり、ピンクにしてもかわいい小松菜奈、案外とヘタレな存在だった岡田准一をワンパンでKOする松たか子、みんな素晴らしいがこの映画で最高なのは一世一代ともいえるはまり役だった柴田理恵なのさ。
1位は余命3ヶ月を宣告されながら念願の檀一雄作品を映画化した大林宣彦監督の最新作。もはや何がなんだかわからないまま3時間が過ぎていく。こんなにアバンギャルドな映画を今この年齢で撮ってしまう大林監督の凄さを見せつけられた。だめな人はだめだろうけど、それでもこの映画の熱量は尋常じゃない。


 続いては新作洋画編。

1. 「ボヘミアン・ラプソディ」
2. 「ダンガル きっと、つよくなる」
3. 「グレイテスト・ショーマン」
4. 「1987、ある戦いの真実」
5. 「ワンダー 君は僕の太陽」
6. 「シェイプ・オブ・ウォーター」
7. 「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」
8. 「ブレス しあわせの呼吸」
9. 「スリー・ビルボード」
10.「レディ・プレイヤー・1」

10位はスピルバーグが完全に楽しんで作ったんじゃないかというオマージュの玉手箱のような映画。元ネタを知っているとなお面白い。ここから映画の世界はまた広がっていく。
9位は一つの事件を巡っての登場人物たちの機微の描き方が素晴らしい。けっしてモラルだけに支配されない人の感情の生々しさを描いている。アカデミー主演女優賞も納得。
8位は難病映画でありながら、どこか気持ちが暖かくなる優しい映画。脚色がどこまでされているのかわからないけれど、これが実話ベースの物語ということに本当に驚かされる。
7位は人気シリーズの最新作。最強の敵サノスに立ち向かうヒーロー達にはぐっとくるし、そして衝撃のラストにはほんとうに驚いた。この映画の為に過去作を全部見直した価値はありました。
6位は昨年の米アカデミー最優秀作品賞受賞作。このテーマが受賞したことは「羊たちの沈黙」以来の衝撃では。半魚人(?)の造形も素晴らしいし、本当に純愛に見せた監督の手腕も秀逸。とにかく撮影が素晴らしい。
5位は再び難病映画。普通なら主人公の少年をもっと描くところを彼を狂言回しにして、周りの人々のストーリーを描くことによって、素晴らしい青春映画、家族映画になった。ほんとうに彼は太陽のように周りを輝かせてるんだよ。
4位は韓国映画らしい尋常じゃない熱量を発している。実際の事件をテーマに政治と警察の裏表を描いているけれど、これは韓国映画でしか描けないんじゃないかというぐらい際どい内容にただただ圧倒される。
3位は新時代のミュージカル映画の金字塔。昨年の「ラ・ラ・ランド」も素晴らしかったけど、それを上回るとことん楽しくて、そして幸せな気持ちになれる。そう、これが映画なんだよ。
2位は女子レスリングをテーマにしたインド発のスポ根映画。自分の夢を娘達に託す父親の姿はまさに星一徹。いま日本でこれをやったら即虐待。でもそんなの関係ない、だってこれもまた実話ベースのお話なんだから。歌は控えめだけど、とにかく最初から最後まで楽しい。
1位は問答無用の生涯ベストランクイン級。もう最初から最後までクイーンの音楽と役者陣のなりきりっぷりに引き込まれる。伝説のバンドの裏幕物なんて簡単にいっちゃいけない、どこまでも本気で音楽を愛してきたフレディの姿が愛おしい。クライマックスをまるまるライブで費やすアイデアも素晴らしい。おかげでライブエイドのブルーレイ買ってしまったよ。


ううむ、やっぱり映画のほうが熱量を感じる。
来年はもう少し映画と読書のバランスを整えていきたいなぁ・・・。

という事で、今年一年お世話になりました。
来年もどうぞ宜しくお願いします_(._.)_