『古事記異聞 オロチの郷、奥出雲』(☆2.4) 著者:高田崇史

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大学の研究室で民俗学を学ぶ橘樹雅は、出雲での調査を終えようとしていた。ところが「出雲の本質は奥出雲にある」という担当教官のひと言で、日程を延長して奥出雲へ向かうことに。素戔嗚尊とは何者なのか?「櫛御気野命」「櫛名田比売」など神の名前に頻出する「櫛」の意味とは?同日、亀嵩近くで起きていた殺人事件。その本質を雅が見極めるとき、「櫛」の謎も明らかに。敗者の歴史が蘇る!
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Amazonより

 高田さんの新シリーズ『古事記異聞』第2弾。前作で大学院の研究の為に出雲を訪れた橘樹雅が、旅の途中またしても事件に巻き込まれます。

 作品自体は前作のラストで予告されていた通り、舞台を奥出雲に移します。奥出雲も当然ながら神話の宝庫。海岸部の神話が大国主命が多いの対し、奥出雲は素盞嗚命や、彼が討ち果たしたとされる八岐大蛇に関する神話が中心。各所にそれにまつわる神社や史蹟があり、雅もまた研究の為にそれらを訪れます。

 ただ、さすが高田作品というべきか殆どの神社が観光ガイドにも載らない、あるいは宮司も常駐しないような、ある意味マニアックなところばかりです。もちろん大学院の研究としての旅なので当然といえば当然ですが、それゆえに内容的にもかなり専門的な要素が強くなっているので、これまでの高田作品の読者、あるいはその道の方ではないと正直読むのはしんどいんじゃないでしょうか。

 ただでさえ、最近の高田作品は過去の作品で取り上げたテーマを一度解体して、再度別の視点で取り上げることが多くなってます。そのため、元となった小説(あるいはテーマ)を知っていることが前提となっているので、新規の読者にとってはハードルが高い・・というより、ここまでくると、元々の読者にとっても小説の体裁をとった新書を読まされているような気分になりそうです。

 そもそも、出雲神話の遺る史蹟で見つかった死体を巡る事件では、雅の歴史探訪パートと殆ど絡みません。ちょっと怪しいかなっていう人が登場しても、結局何もなし。最後にちょろっと神話考察に絡むアドバイスを警察に伝えて事件解決の糸口を与えてますが、これがヒントになあ、というレベルだし、それがなくても警察がそのうち解決してくれそうな感じ。
 事件の犯人にしても、その動機が異様すぎる(というか神話絡みのパートの登場人物自体が、ほんとに現代人ですか!?というぐらい四柱推命に縛られててみんな怪しすぎるレベル)ので、感心を通り越して、唖然呆然です。

 ラストで次回は京都に行きそうな終わり方をしているので、まだまだ続くんでしょうが、響子と蓮くんのシリーズはともかく、再開したQEDシリーズとの棲み分けが心配です。

採点  ☆2.4