『レスト・イン・ピース〜6番目の殺人鬼〜』(☆3.2) 著者:雪富千晶紀

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 大学生の越智友哉は、中学の同窓会に参加することに。しかし集まったメンバー達は、一様に何かに怯えていた。そんな中、1人が突如変死する。実は既に元級友が6人も、謎の死を遂げているという。更に続く旧友の死に、友哉は元彼女のリカらと共に調査を開始。近現代の連続殺人犯たちをモチーフにした、テーマパークのホラーハウス、“殺人館”の呪いではと推測するが…。
 このどんでん返し、予測不可能!究極のホラーミステリ、登場!!


Amazonより

 相次ぐクラスメイトの不審死、近現代の連続殺人犯をモチーフにしたホラーハウス「殺人館」(安直なネーミングだが^^;;)の呪い、死のタイムリミットが迫る中での謎解き・・・なんだか、ホラー好きにはそそる素材ばかり。リングを彷彿させるこの設定、当たりハズレは大きいけれど、もうそれは覚悟の上ですよね。

 とりあえず冒頭からの展開が上手い。何かと戦おうと決意する「僕」、同窓会上での突然死に混乱する語り手・友哉と同級生たち。同級生たちの不審死は過去に連続しており、その名前が淡々と並んでいく描写は、どこか現実離れした出来事のようで居心地が悪い。

 さらには友哉視点での物語の間に挟まれる、中学校時代のエピソード。別のクラスメイトの視点で語られる物語は、一見仲の良さそうなクラスの中に漂い始めるイジメの影、さらに進学クラスゆえの家族との葛藤、成績と規律を重視する教師の姿から、なにか「殺人館」の呪いとは別のイヤな何かが事件の裏に隠れていると思わせる。
 訪れた見物客の急死が続く「殺人館」の、データに裏打ちされた「呪い」と思わせる現象の不気味さと、中学時代のエピソードが交錯して、これはホラーなのかミステリなのか、と考えさせられる。

 友哉をはじめとした仲間たちが比較的裕福な環境であるという設定もあって、普通なら門前払いされそうな相手から話を聞け当たり、あるいは呪いの真相を解明するためにあっさりとアメリカに行ってしまうなところなど、ちょっと安易かなという部分はみられるけれど、そこに目をつぶればストーリーテリングの上手さがあると思う。

 ただ、それまで漂っていた不穏な空気が真実が明らかになった瞬間一気に別ベクトルに向かうクライマックスは正直好みが分かれると思う。それまでも結構ムチャだなと思う所はあったけど、この真実に比べたら可愛いものだった。もはや大風呂敷を通り越した荒唐無稽な展開、完全にBの世界に足を突っ込んでしまった。

 それでもこのムチャ過ぎる展開を小説上成立させるために、冒頭からクライマックス直前の場面まで気を配って書いてあること自体は評価できる。読みながら違和感を感じたところだけでなく、さりげない部分まで真実が明らかになったあとに読み返してもうまく書いてるな、と思う。
 帯のどんでん返しや予測不能の謳い文句はやや過剰すぎるかなとも思うけれど、あながち間違いないのかもしれない。さらには事件が終わった後に残るある事実については、もしかしたらカーの某作品に影響を受けているのかもしれないが(多分違う)、個人的には嫌いじゃなかった。

 本としてはサクサク読めるし、世界観は楽しい。あとは真実についてそのBっぷりを楽しめるか、壁本になるかは読者次第。個人的には総合的にみて前者だったけど、あなたはどうでしょうか。

 



採点  ☆3.2