邦画『サニー/３２』（2018年 日本映画）

サニー／３２

　冬の新潟の或る町。仕事も私生活も振るわない中学校教師・藤井赤理（北原里英）は24歳の誕生日を迎えたその日、何者かに拉致された。やったのは二人組で、柏原（ピエール瀧）と小田（リリー・フランキー）という男。
　雪深い山麓の廃屋へと連れ去り、彼女を監禁！小田は嬉々としてビデオカメラを回し、柏原は「ずっと会いたかったよ、サニー……」と、そう赤理のことを呼んだ。 “サニー”とは―世間を騒がせた「小学生による同級生殺害事件」の犯人の通称だった。事件のあらましは、当時11歳だった小学生女児が同級生を、殺害したというもの。突然、工作用のカッターナイフで首を切りつけたのだ。
　 事件発覚後、マスコミが使用した被害者のクラス写真から、加害者の女児の顔も割りだされ、いたいけで目を引くルックスゆえに「犯罪史上、最も可愛い殺人犯」とたちまちネットなどで神格化、狂信的な信者を生み出すことに。出回った写真では、独特の決めポーズ（右手が３本指、左手は２本指でピースサインをつくる）も話題を集め、それは信者たちの間で「32（サニー）ポーズ」と名付けられ、加害女児自体も“サニー”と呼ばれるようになった。 
　奇しくも、この“サニー”の起こした事件から14年目の夜に二人の男によって拉致監禁された赤理。 柏原も小田もカルトな信者で、二人は好みのドレスに着替えさせ、赤理の写真や動画をネット上の「サニーたんを愛する専門板www」にアップ。赤理は正気を失っていきながらも、必死に陸の孤島と化した豪雪地帯の監禁部屋から脱出を試みる。が！それは驚愕の物語の始まりにすぎなかった―。



* 監督：白石和彌
* 脚本：高橋泉
* スーパーバイザー：秋元康


* 藤井赤理：北原里英
* 柏原勲：ピエール瀧
* 小田武：リリー・フランキー
* 二人目のサニー：門脇麦
* 春樹先輩：音尾琢真
* 田辺康博：駿河太郎
* 向井純子：蒼波純
* 山崎銀之丞
* カトウシンスケ
* 奥村佳恵
* 大津尋葵
* 加部亜門
* 松永拓野
* 蔵下穂波
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　暴力と狂気に溢れた傑作『凶悪』の白石監督、そしてピエール瀧、リリー・フランキーの鬼畜主演コンビが再びタッグを組み、さらには物語のモチーフが「佐世保小6女児同級生殺害事件」ということで、どんな凶悪な物語が繰り広げられるのか、と我ながら悪趣味な期待を持って鑑賞。唯一は主演のきたりえの演技を上手いと思ったことが無いところだけなのですが・・・。

　ううむ・・・・・・予想の斜め上をいく展開の正直どう捉えればいいのか戸惑うばかり。
　オープニングの授業シーン、様子がおかしい生徒へのまっとうなぐらいの励まし、先生としても役者としても空回り演技のきたりえさん。嫌な予感しかしないな〜〜〜、と思います。

　そして、サニー（「NEVADA事件」をモチーフにした映画上の小学生殺人者）の狂信的信者に勘違いされて拉致られるきたりえ。ここは迫真の演技。でもそれの上をいくピエール瀧とリリー・フランキーの「凶悪コンビ」（立場は凶悪と逆）。さらには拉致監禁場面をネットで実況中継。ここから鬼畜な展開が始まるのか・・とワクワク（変態）してると、ドローンでいきなり監禁場所特定！？

　勝手な予想としては勘違い拉致されたヒロインが徐々に本物のサニーと精神的に同化して殺人者として覚醒、破滅していくというストーリーかな・・・と思ってましたが、半分当たりで半分はずれって感じ？
　SNS「SHOWROOM」や「２ちゃん」をモチーフにしたようなツールを介しての犯罪者と観客の繋がりの嘘くささ、薄っぺらさ。こんなんしてたら警察さっさと監禁場所を特定できるだろ、というツッコミはともかく、あまりに非リアル的な嘘っぽさが今時のリアルっぽくてちょっと嫌だ。

　ただやっぱりビミョーに肌に合わないものを見せられてる感じ、こりゃしんどいなと思ってたら怒濤の後半！！薄っぺらいきたりえの演技に苦笑しか浮かばなくなった頃に、ナチュラルボーン門脇麦降臨。役者としての分厚さの違いが、役柄としての分厚さにリンク！！そうか、これが狙いのキャスティングだったのか！！（違う）

　演技のコントラスト、監禁の凶悪性とネット中継という対照的な状況、計算された薄っぺらさは感じるし、色々と思うトコもあるけれど、個人的にはビミョーに合わなかった。
　それにしても、アイドルの演技に辟易するのに、そこにアイドルをキャスティングしてるからこそ映画としてもありになってるのは、なんとなく奥深く感じてしまう（嘘）。