邦画『不能犯』(2018 日本)

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都会で次々と起きる変死事件。いずれの被害者も、検死をしても、何一つとして証拠が出てこない不可解な状況で、唯一の共通点は事件現場で必ず目撃される黒スーツの男。その名は宇相吹正(松坂桃李)。 彼こそがSNSで噂の〈電話ボックスの男〉だった。とある電話ボックスに、殺人の依頼を残しておくと、どこからともなく彼が現れ、ターゲットを確実に死に至らしめるという。その死因はどれも病死や自殺に事故―― 宇相吹の犯行は、すべて立件不可能な犯罪、〈不能犯〉だった。今日も、愛憎や嫉妬、欲望に塗れた人々が彼のもとにやってくる。そんな中、警察はようやく宇相吹の身柄を確保し、任意で取り調べを始める。 多田(沢尻エリカ)と部下の百々瀬(新田真剣佑)が見守る中、宇相吹を前に上司の夜目(矢田亜希子)が取り調べを始めるが、次第に夜目の様子がおかしくなり、最終的に宇相吹は解放される。彼の正体とは一体―。そして、真の目的とは―。


* 監督:白石晃士
* 原作:宮月新、神崎裕也
* 脚本:山岡潤平白石晃士

* 松坂桃李:宇相吹正
* 沢尻エリカ:多田友子
* 新田真剣佑:百々瀬麻雄
* 間宮祥太朗:川端タケル
* テット・ワダ:赤井芳樹
* 菅谷哲也:若松亮平
* 岡崎紗絵:前川夏海
* 真野恵里菜木村優
* 忍成修吾:羽根田健
* 水上剣星:木島功
* 水上京香:羽根田桃香
* 今野浩喜櫻井俊雄		
* 堀田茜:西冴子
* 芦名星:夢原理沙
* 矢田亜希子:夜目美冬
* 安田顕:河津村宏
* 小林稔侍:鳥森広志


 単純に予告編の松坂桃李がカッコ良かったので鑑賞。

 マインドコントロールで対象者を操り、科学的に立証不可能な殺人を犯す不能犯松坂桃李が演じる宇相吹正はそんな男。のっけの喫茶店のシーン、喫茶店でお茶する闇金の取り立て男の前に登場、スズメバチの詰まった瓶を開封してアナフィラキシーショックで殺害。おいおい、バレバレじゃんと思ったら、スズメバチの大群は幻覚!!そんなにすごいんかい、とビックリ(゚д゚)!

 その後もどんどんとターゲットを死亡させていく宇相吹。しかも彼が操るのはターゲットじゃなく依頼人も一緒。依頼人の殺害動機が純粋でなければ、依頼人も殺しちゃう。純粋の基準はよく分かりませんが、「人を呪わば穴二つ」を地で行く展開は、ターゲットを殺害する場面よりぶっちゃけ印象が強いです。特に二人目のターゲットの鳥森広志のエピソードは映画前半のクライマックといえるぐらいの出来だったですね。

 ただ、あまりにターゲットが多いせいか、物語のテンポが早い。早すぎて、宇相吹正の信念である、人の愚かさと強さを観てみたい、という部分があまり伝わってこないなぁ。映画の上映時間という制約もあるので宇相吹のキャラの設定の掘り下げの難しさもあったと思うのですが、一方で彼を追う警察側が精彩を欠いていたのも、物語に大きな波を感じないのも原因の一つにあると思います。

 宇相吹の犯罪に対して、警察としてのモラルと事件を終わらせる為に殺害すら覚悟する多田刑事・・・うーむ、伝わってきません(;^ω^)沢尻エリカの一本調子の演技(嫌いな女優さんじゃないんですが、この映画に関しては・・・)に、事件を通しての成長みたいものを一切感じさせません。さらにはそんな多田刑事を支える上司達の演技がまごうこと無く棒。事件が起これば棒、いよいよクライマックスだぜ、というところで棒、至る所で棒。ことごとく物語の緊張感を台無しに。何故彼らをキャスティング・・・。

 なんだか悪いところが多い感じになってしまいましたが、そんなマイナス部分を補ってくれるのが松坂桃李。怪しく目を光らせながらの口角を釣り上げる不気味な笑顔。長身、スタイルの良さ、整った顔を持つその姿が妖しさと美しさを醸し出してくれます。やってることは喪黒福造に近いんですが、とにかくかっこよすぎて彼ならもしかして出来るんじゃないかと思わせる貫禄。新田真剣佑もかなりカッコよくいい演技を見せてくれるのですが、松坂桃李には及ばないですね。

 映画を見終わったあとに原作をパラパラ立ち読みしましたが、一話読み切りみたいな感じなんですね。うん、これは映画よりも連続テレビドラマにして、一つ一つのエピソードをしっかり掘り下げていった方が面白かったんじゃないのかなぁ。。。