洋画『ダンケルク』(2017年 合作映画)

イメージ 1

 1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。
 ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。
 一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。
 さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。

* 監督・脚本:クリストファー・ノーラン

* トミー - フィン・ホワイトヘッド[: 英国陸軍二等兵[11]。
* ピーター[- トム・グリン=カーニー: ミスター・ドーソンの息子。
* コリンズ - ジャック・ロウデン: 英国空軍。スピットファイアパイロット。
* アレックス - ハリー・スタイルズ: 英国陸軍「高地連隊」の二等兵。
* ギブソンアナイリン・バーナード: トミーと行動を共にする無口な兵士。
* ウィナント陸軍大佐 - ジェームズ・ダーシーボルトンと共に作戦を見守る陸軍将校。
* ジョージ - バリー・コーガン: ミスター・ドーソンに同行する青年。
* ボルトン海軍中佐 - ケネス・ブラナー: 防波堤で撤退作戦の指揮を執る海軍将校。
* 謎の英国兵 - キリアン・マーフィー: ミスター・ドーソンに救出された英国兵。
* ミスター・ドーソン - マーク・ライランス: 小型船の船長。ピーターの父親。
* ファリア - トム・ハーディ: 英国空軍。スピットファイアパイロット。
* 隊長の声 - マイケル・ケイン: 英国空軍。スピットファイアパイロット。ファリアとコリンズの隊の指揮官。


 オープニングの街。紙切れが舞う市街での銃撃戦。カメラワークの美しさにいきなり心を奪われた。いかにもノーランっぽいし、IIMAXカメラの効果もあるんだしょうか。奥行きを感じさせる構図、必要最低限の台詞と音楽、過度なドラマ性を抑えた脚本が生み出した世界は一つの叙情詩のよう。

 ダンケルク戦線からの脱出を図るイギリス軍。負傷した兵士を優先して船に乗せる軍人としてのルールは守られるが、船を乗れなかった隊員たちの表情にはほとんど表情が無い。今の状況を受け入れざるを得ない諦念の表れだろうか。

 一方で、数的不利の中救出作戦の援助の向かう空軍パイロット達や、民間船の船長として救出作戦に参加するドーソン達の表情には、責任を纏う強さが在る。多分ダンケルク戦線の兵士達もかつてはこの表情を持っていたんだろう。そのヒロイズムの象徴なのが、民間船に乗り込みダンケルクに向かったジョージかもしれない。救出戦でヒーローとなり英雄として新聞を飾る。実体験として戦争の過酷さをしるドーソンやパイロット達と較べても、その表情は無邪気なヒロイズムに溢れている。

 陸(ダンケルク)、空(ドイツとの戦闘機戦)、海(救出戦)の物語は、それぞれ一週間、一日、一時間と別々の時間軸の中で交錯しながら描かれている。最初はその並列に戸惑ったけれども、観終わってみればそれぞれの時間軸を分けることで、無駄にドラマを作り出すこともなく、戦争に関する場面だけで救出作戦を描くことに繋がったと思う。

 台詞やドラマ性、音楽など映画における様子がある意味過剰に感じるくらい抑制されている中で、エンターテイメントとしては、同じ過酷な戦争を描いた「プライベート・ライアン」などに較べるとリズムに乏しく、そういった意味では観るのにかなり重さを感じるし、途中で飽きてしまう人もいても不思議では無いと思います。

 ただ、陸・海・空のそれぞれの物語の結末の中で、直接的には語られないけど伝わってくる戦争の残酷性、ドラマ性は、戦争映画のひとつの形として有りだと思いまいた。個人的には傑作だと思います。