洋画『オリエント急行殺人事件』(1974 イギリス)

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 アガサ・クリスティの名作推理小説オリエント急行の殺人」をオールスターキャストで映画化したミステリー。
 1935年、私立探偵エルキュール・ポアロは大陸横断列車オリエント急行に乗り、ロンドンを目指していたが、豪雪のため列車が立ち往生してしまう。そしてその夜、列車内でアメリカ人の富豪ラチェットが何者かに殺害されるという事件が発生。ポアロは乗客たちから事情を聴き、事件の調査を開始するが、やがて殺されたラチェット氏と5年前にアメリカで起こったある事件とのつながりが見え始め、意外な真相が明るみになる。

* 監督:シドニー・ルメット
* 脚本:ポール・デーン

* アルバート・フィニーエルキュール・ポアロ
* ローレン・バコールハバード夫人
* マーティン・バルサムビアンキ
* イングリッド・バーグマングレタ
* ジャクリーン・ビセットアンドレニイ伯爵夫人
* ジャン=ピエール・カッセルピエール
* ショーン・コネリーアーバスノット大佐
* ジョン・ギールグッドベドウズ
* ウェンディ・ヒラードラゴミノフ公爵夫人
* アンソニー・パーキンスマックイーン
* バネッサ・レッドグレーブメアリー・デベナム
* レイチェル・ロバーツヒルデガルド
* リチャード・ウィドマークラチェット
* マイケル・ヨークアンドレニイ伯爵
* コリン・ブレイクリーハードマン
* ジョージ・クールリス医師
* デニス・クイリーフォスカレッリ


 昨年ケネス・ブラナー版を観たので、今回は74年のシドニー・ルメット版を鑑賞。
ブラナー版がいい意味でゴージャス感のあるビジュアルが演劇的だったのに対し、出演するスター俳優の存在感とテンポの良い構成はより映画な感じだった。
 映像的には古めかしいところもあるけれど、逆にその古めかしさがオリエント急行のオリエンタルな雰囲気にあってるのかも。

 ブラナー版が今の技術を駆使したスケールで車内のみならず列車外にも飛び出したのに比べ、こちらは一度列車に乗ったら降りること無くすべての展開がオリエント急行の中で完結。
それでもどちらにテンポの良さを感じたかといったら、こちらのルメット版。へんに凝った魅せ方をするんじゃなく、豪華列車の中で繰り広げられる俳優陣の演技合戦をいかに面白く見せるかに力を入れてるからかも。

 ブラナーのポアロも悪くなかったけど、アルバート・フィニーポアロは馴染みの深いデヴィット・スーシェのビジュアルに近くてなんか安心。冒頭のシーン、ポアロの性格を見せる場面でもブラナー版は神経質ながらちょっとユーモアを感じさせたけれど、フィニー版はいい意味で変人っぽいポアロになってる。色んな場面で見せるエキセントリックな態度だったり、ネットをかぶって髭マスク(?)をして就寝するあたりなんかチャーミング過ぎです。

 他の俳優陣もしっかり知ってるかと言われると、ショーン・コネリーイングリッド・バーグマンアンソニー・パーキンスしかはっきりと知らないけど、ほかの役者さんの豪華感というか迫力はブラナー版より強烈に感じる。
 でも、ドラゴミロフ公爵夫人はブラナー版のジュディ・デンチの方が貫禄あったかなー。

 ミステリ映画としてみても、オープニングでの事件の遠因になる過去の事件の場面が、推理部分で効果的に使われたり、事件を解明するためのポアロの仕掛けがさりげなく散りばめられていて、ラストの意外性に繋がってました。
 ブラナー版もツボはしっかり抑えていたのですが、ミステリ映画としての完成度はこちらの方が高かったと思います。ブラナー版の方が良かったと思ったのは、いよいよポアロが真相を語るぞという場面、こちらの映画では列車の食堂部分で行われたのが、ブラナー版では列車の外、トンネルの前に一列に並んでいて多くの人が指摘するように「最後の晩餐」を彷彿させる情景だったところでしょうか。

 ブラナー版も決して出来は悪いわけじゃないと思います。ただ、どちらが好きかと言われると、こちらのルメット版の方を挙げたいと思います。