『人間じゃない 綾辻行人未収録作品集』(☆3.7)  著者:綾辻行人

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 衝撃のデビュー作『十角館の殺人』から30年――。メモリアルイヤーにお贈りする綾辻行人の最新刊!
 持ち主が悲惨な死を遂げ、今では廃屋同然の別荘<星月荘>。ここを訪れた四人の若者を襲った凄まじい殺人事件の真相は?――表題作「人間じゃない――B〇四号室の患者――」ほか、『人形館の殺人』の後日譚「赤いマント」、『どんどん橋、落ちた』の番外編「洗礼」など、自作とさまざまにリンクする5編を完全収録。単行本未収録の短編・中編がこの一冊に!

Amazonより

 待ちに待った綾辻さんの新作。「人形館の殺人」も再読して、準備万端、いざ!!
と思ったら、『人形館~』再読しなくても大丈夫な内容だったですね^^;;あのネタはまず忘れないし。ただ、未読の人は登場人物が被るので、先に『人形館~』を読んでおかないと、容疑者が減っちゃうのでご用心。

 で、全体的な感想としては、綾辻ファンなら読んでも損はないと思うけど、読んだことがない、あるいは特にファンでない人にとっては満足できるかというと、ちょっとビミョーかな~。未収録短編集なので一冊の本としてのコンセプトがある訳でもないし、収録作がバラエティに富んでいる反面、好みの作品じゃないと思うのもあるかもしれないですね。ただ、逆をいえば全ての作品が、過去の発表作の後日談・姉妹編というところがあるので、好きな短編があれば、元の作品を読んでみるといいのかも。ん?そうするとやっぱりこれは綾辻初心者向けになっちゃうのか・・・?

『赤いマント』
 『人形館~』の後日談という位置付けだけれども、登場人物が被るだけで、実は全く方向性の違う真っ当(?)なミステリ。全然趣きが違います。殆どの人が作者(犯人)の狙いが分かるだろうと思う。怪談的な雰囲気は楽しめるんですけどね。ちなみに私の地元では「赤いマント」ではなく「赤いちゃんちゃんこ」だったような・・・。

『崩壊の前日』
 『眼球綺譚』所収「バースデー・プレゼント」の姉妹編ということですが、元ネタはまったく覚えてません^^;;新本格の先駆者としてではなく、幻想作家としての綾辻さんの一面が見れる短編。その分好みは分かれるかも。嫌いじゃないけれど、モチーフイメージの描写が個人的には読みづらかったかなぁ・・・。

『洗礼』
 『どんどん橋、落ちた』での連作短編の続編・・・といっても、初期の変化球的なものじゃなく、作中作の手法を使った真っ当な犯人当て小説。当てられる確率も低くはないかな、という印象。でもこれは作品どうのこうのちうよりU山さんこと宇山さんとのリンクのほうが切ない・・。

『蒼白い女』
 『深泥丘奇談』系統の作品。現代的な小道具を使いつつ怪談としての真っ当な構成なのがいかにも、な作品。その反面、分量の少なさもあった、印象に残りにくいかも。『深泥丘奇談』の収録作としてよめば、その世界観に馴染むと思うし、そういった意味ではちょっとここで載る事で損をしてる短編かも。

『人間じゃない~B◯四号室の患者』
 『フリークス』所収の患者シリーズの番外編。やってることはスプラッタ系ホラーで、これまた綾辻さんの一面を見せてくれる。起承転結の中で超常現象的な世界観ながらきちんとロジックを踏んでるとこなんかはこれまた綾辻さんらしい。個人的には一番好きだった。




採点  ☆3.7