映画『ラ・ラ・ランド』  監督:デイミアン・チャゼル


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 『セッション』などのデイミアン・チャゼルが監督と脚本を務めたラブストーリー。女優の卵とジャズピアニストの恋のてん末を、華麗な音楽とダンスで表現する。『ブルーバレンタイン』などのライアン・ゴズリングと『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのエマ・ストーンをはじめ、『セッション』でチャゼル監督とタッグを組んで鬼教師を怪演したJ・K・シモンズが出演。クラシカルかつロマンチックな物語にうっとりする。
あらすじ:何度もオーディションに落ちてすっかりへこんでいた女優志望の卵ミア(エマ・ストーン)は、ピアノの音色に導かれるようにジャズバーに入る。そこでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会うが、そのいきさつは最悪なものだった。ある日、ミアはプールサイドで不機嫌そうに1980年代のポップスを演奏をするセバスチャンと再会し……。

 今年度のアカデミー賞を賑わせた話題作。ディズニーも見たことがなく、ミュージカル映画も『サウンド・オブ・ミュージック』がうっすら記憶に残ってるだけの自分にはどうなんだろ~と思ってたけど・・・

 いやあ、もう、すごい、泣ける。チャゼル監督の前作『セッション』もジャズをベースにした、暑苦しいぐらいのとんでもない熱量の映画だったけど、今作も同じ音楽をベースにしながらも、まったく別のベクトルの軽やかな作品を作り上げた。

 オープニング。高速の上の渋滞。いきなり始まる唄とダンス。歌詞の内容も含めて夢と希望に溢れていて、こっちのハートを鷲掴み。すごく楽しい。そんな道路ですれ違った女優を目指すミアと、本物のジャズへのこだわりを持つピアニストであるセブは、偶然レストランで再会する。
 お互いに励まし合い、挫折を繰り返しながらもそれぞれの夢を追いかける二人は少しずつ惹かれあっていく。そんな二人にビッグチャンスが訪れるが・・・。

 初めての出会いから少しずつ距離を縮めていく二人の関係を、唄と音楽が盛り立ててくれる。それは下手な台詞よりも、雄弁に観客に語りかけてくれる。ほぼ映画全編に流れる音楽の力をヒシヒシと感じる。

 そして役者陣も素晴らしい。映画を通して脇役らしい脇役はほとんどおらず、ひたすらに主人公二人の物語が続いていく。
 何度もオーディションに落ちながら、自分の夢を諦めずに進んでいくミアを、チャーミングな歌声とダンスで生き生きと演じるエマ・ストーン。この役のために猛練習したピアノで自分の感情を雄弁に、そして繊維に表現するセブ役のライアン・ゴスリング。
 才能はあるけれど、どこか垢抜けない二人。それぞれの夢を目指すサクセス・ストーリー的要素がありながら、物語はそこに重きを置くのではなく、あくまで二人の距離を捉えていくから、観客としても共感しやすいし、応援したくなる。

 そしてこの作品の主役の一つでもある音楽。ミュージカル場面だけでなく、台詞やカット割のテンポも、もはや音楽の一部のようにリズムカルだ。『セッション』で見せた音楽の凄まじさの突き詰めっぷりをさらに映画として昇華させたチャゼル監督の力量も半端ない。

 最近のハリウッドに多い政治的な影もなく、ただ古き良き時代のミュージカル映画の良さを残しつつ現代にアレンジされた現在進行形としてのミュージカル映画



「ラ・ラ・ランド」本予告