念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。健診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持つこまれる様々な事件の真相は、 少し切なく、少しこわい。構成の妙、トリッキーなエンディングが鮮やかな連作短篇集。 Amazonより
葉村晶シリーズ第2弾。今回は完全に葉村さんだけの作品集。
事件を依頼されて、動く。いわゆる私立探偵的な仕事をしているが、作品を通してみると、彼女を動かしているのは、解決したい(してあげたい)というより、知りたいという渇望のような気がする。彼女が関わった事件についても、必ずしも彼女が全てを解き明かせたわけではなく、解けなかった、間に合わなかった、そして終わってみれば傍観者にしかなれなかった事件もある。
彼女が興味をもつのは謎そのものよりも、その謎に関わる、あるいはその謎を生み出す人間が対象になるのがほとんで、時には相手の人間の内面的な歪み(?)が突出しすぎて、ミステリというよりはサスペンスかホラーか、といった味わいの作品に仕上がってる事もあるが、そのバラエティ性も魅力の一つだと思う。
結局、人間の心の本当のところは本人しか分からないし、いくら優れた探偵でもそこに関しては無力だ。そこに関して本当に力を発揮できる探偵がいたとしたら、それはまさにメタ探偵の領域で事件なんか起こらないと思うわけで・・・
おっと、少し話がそれた気が。葉村晶という主人公はその無力さを実感しながらも、知るということへの渇望の為に闇に踏み込んで行く強さ、その強さの中にボーダーラインを超える事への恐怖を感じることが出来る人間本来の弱さを持ち合わせる。
長い空白期間を開けても帰ってきただけの存在感があると思う。
それにしても『プレゼント』のときも少し思ったのですが、引用させてもらってるAmazonの紹介文(出版社の文章?)が、どうも少しピントを外してるような気がするのは僕だけでしょうか???
結局、人間の心の本当のところは本人しか分からないし、いくら優れた探偵でもそこに関しては無力だ。そこに関して本当に力を発揮できる探偵がいたとしたら、それはまさにメタ探偵の領域で事件なんか起こらないと思うわけで・・・
おっと、少し話がそれた気が。葉村晶という主人公はその無力さを実感しながらも、知るということへの渇望の為に闇に踏み込んで行く強さ、その強さの中にボーダーラインを超える事への恐怖を感じることが出来る人間本来の弱さを持ち合わせる。
長い空白期間を開けても帰ってきただけの存在感があると思う。
それにしても『プレゼント』のときも少し思ったのですが、引用させてもらってるAmazonの紹介文(出版社の文章?)が、どうも少しピントを外してるような気がするのは僕だけでしょうか???
『濃紺の悪魔』
ある女性に届いた受けてない健診結果、そこにはガンの通知が・・。正体不明の悪意から彼女を守ることになった葉村だが・・。
冒頭のサスペンス的な構成から、中盤以降の心理サスペンス的なノリ、そしてラストでの転調。個人的にはゾッとしたラストですけど、その方向性故に好き嫌いは分かれるかも。決して一筋縄ではいかない作品の流れを作ってるかな。
ある女性に届いた受けてない健診結果、そこにはガンの通知が・・。正体不明の悪意から彼女を守ることになった葉村だが・・。
冒頭のサスペンス的な構成から、中盤以降の心理サスペンス的なノリ、そしてラストでの転調。個人的にはゾッとしたラストですけど、その方向性故に好き嫌いは分かれるかも。決して一筋縄ではいかない作品の流れを作ってるかな。
『詩人の詩』
葉村の友人の婚約者である詩人が車で事故死した。自殺も疑われるような状況に、彼の身に何が起こったのか知りたいという依頼を受ける。
一人の死を巡って彼が生きた人生での役割のタグ付け、それぞれの役割の中で交差する人間の善意と悪意の残酷さ。ラストは予想の範疇に収まるだけに、タグ付けをすることによって、ラストの葉村の言葉が生きたと思う。
葉村の友人の婚約者である詩人が車で事故死した。自殺も疑われるような状況に、彼の身に何が起こったのか知りたいという依頼を受ける。
一人の死を巡って彼が生きた人生での役割のタグ付け、それぞれの役割の中で交差する人間の善意と悪意の残酷さ。ラストは予想の範疇に収まるだけに、タグ付けをすることによって、ラストの葉村の言葉が生きたと思う。
『たぶん暑かったから』
ある会社で就業時間中に起きた傷害事件。お互いほとんど接点がないと思われる二人に何があったのか。
不可解な状況を解きほぐしながら事件の筋書きを暴いた葉村に突きつけられた隠された真相。現代的でありながら後期クイーンを思わせる味付けは好み。
ある会社で就業時間中に起きた傷害事件。お互いほとんど接点がないと思われる二人に何があったのか。
不可解な状況を解きほぐしながら事件の筋書きを暴いた葉村に突きつけられた隠された真相。現代的でありながら後期クイーンを思わせる味付けは好み。
『鉄格子の女』
一人の画家とその妻の死。彼の作品の中の一枚の絵を通して見えてくる真実とは。
事件の真相そのものはたぶん想像出来る。その想像しうる真相の闇の深さをラスト2行で端的に表現した構成が印象に残った。
一人の画家とその妻の死。彼の作品の中の一枚の絵を通して見えてくる真実とは。
事件の真相そのものはたぶん想像出来る。その想像しうる真相の闇の深さをラスト2行で端的に表現した構成が印象に残った。
『アヴェ・マリア』
境界で起きた殺人事件と、現場から消えたマリア像を探して欲しいという依頼に・・。
作中もっともトリッキーな作風で、語り手も葉村ではなくその同僚。全ての真相が明らかになったとき、それまで見てきた風景が一変する。読み終えてみるとオープニングの場面がさらに印象に残った。
境界で起きた殺人事件と、現場から消えたマリア像を探して欲しいという依頼に・・。
作中もっともトリッキーな作風で、語り手も葉村ではなくその同僚。全ての真相が明らかになったとき、それまで見てきた風景が一変する。読み終えてみるとオープニングの場面がさらに印象に残った。
『依頼人は死んだ』
あるパーティーで再会したかつての友人から気味の悪い手紙の相談を受ける葉村だが、直後にその友人が死んでしまう。
依頼人を守れなかった事により、否応なく自分自身の物語となってしまう、正統派ハードボイルド的な作品。ラストの終わり方がコロンボっぽくて好きです。
あるパーティーで再会したかつての友人から気味の悪い手紙の相談を受ける葉村だが、直後にその友人が死んでしまう。
依頼人を守れなかった事により、否応なく自分自身の物語となってしまう、正統派ハードボイルド的な作品。ラストの終わり方がコロンボっぽくて好きです。
『女探偵の夏休み』
同居人と避暑(?)の為にあるホテルに訪れた葉村。彼女を待ち受けていたのは平和な夏休みか、それとも事件か。
葉村とその同居人であるみのり、二人の視点で交互に描かれる物語。物語としては小粒だけれども作者の技巧が込められた作品。うまくは着地してるけれども、その分作品集の中ではすこし浮いてるかもしれない。
同居人と避暑(?)の為にあるホテルに訪れた葉村。彼女を待ち受けていたのは平和な夏休みか、それとも事件か。
葉村とその同居人であるみのり、二人の視点で交互に描かれる物語。物語としては小粒だけれども作者の技巧が込められた作品。うまくは着地してるけれども、その分作品集の中ではすこし浮いてるかもしれない。
『わたしの調査に手加減はない』
一人の女性の死。果たして事故か、自殺か、殺人か。
事件そのものはシンプルだし、決して捻ったものではない。ただ、探偵は依頼人の思う真相を掴むために動いてるのではない、というタイトルにも込められた意味。
一人の女性の死。果たして事故か、自殺か、殺人か。
事件そのものはシンプルだし、決して捻ったものではない。ただ、探偵は依頼人の思う真相を掴むために動いてるのではない、というタイトルにも込められた意味。
『都合のいい地獄』
冒頭の「濃紺の悪魔」を受けた作品の位置づけ。とはいっても、他の収録作のなかでも触れられてるエピソードですが。なんといっていいやら完全にサスペンスで、ラスト一行はやっぱり(?)ホラーテイスト。これ以降のシリーズへの布石なのかなぁ。
冒頭の「濃紺の悪魔」を受けた作品の位置づけ。とはいっても、他の収録作のなかでも触れられてるエピソードですが。なんといっていいやら完全にサスペンスで、ラスト一行はやっぱり(?)ホラーテイスト。これ以降のシリーズへの布石なのかなぁ。
こうしてすべての収録作の感想を見てみると、終わり方が好みなんだろうな、と改めて思いました。
採点 | ☆4.0 |