『プレゼント』(☆3.8)  著者:若竹七海

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 ルーム・クリーナー、電話相談、興信所。トラブルメイカーのフリーター・葉村晶と娘に借りたピンクの子供用自転車で現場に駆けつける小林警部補。二人が巻き込まれたハードボイルドで悲しい八つの事件とは。
 間抜けだが悪気のない隣人たちがひき起こす騒動はいつも危険すぎる。

Amazonより

 1996年の作品。若竹さんを最後に読んだのはいつで何だろうとまったく思い浮かばないのですが、少なくともこの作品は読んでるはず。この頃(大学生・・・^^;;)は若竹さんにハマってた時期だと思うので。

 最近葉村晶シリーズが話題になってるので、とりあえず読み返してみようという事で図書館で借りる。読んでみると、まぁ見事にまったく内容を覚えていない。純粋な葉村晶シリーズの短編集じゃなく、小林警部補が登場する作品が交互に描かれてました。葉村作品は彼女の一人称、小林警部補は登場人物の視点と、微妙に描写が違います。
 ただ両方に言えるのはどれも一筋縄ではいかない作品ばかりだという事。どの作品も表面上はシンプルな筋立てに見える。それは時にフーダニットだったりホワイダニットだったりするのだけれども、読み終えてみるとその筋立てそのものが作者の仕掛けだったりする。小説としての構成も含めて、若竹さんの技術がどれも感じられるし、トリックそのものというよりも後味の良し悪しは別にして、20年も前の作品なのに古びた感じはしないです。

『海の底』(葉村晶)
 作家が缶詰になっていたホテルからいなくなり、残されたのは血痕のみ・・。
 一体どうやって作家がホテルの一室から消えたのかが謎の主題と見せかけて・・な作品。消失方法は想像出来るけど、それを成立させるための条件の見せ方がさりげない。色んな所に散りばめられてるのにまったく気がつかなかったなぁ。。

冬物語
 冬山にぽつんとある別荘で一人の男が完全犯罪を目論むが。。
 表面上はシンプルな事件だけれども実は物語には裏表があって、一捻りしている。ラストでのひっくり返し方はそうなの?と思う。それにしてもラストの一行と良い、捜査の雰囲気といい、小林警部補って刑事コロンボだよなぁ。。

『ロバの穴』(葉村晶)
 葉村晶の新しいバイト先は、ひたすら人の愚痴を聞くだけのテレホンアポインター。ただその場所はなぜか自殺率が高く・・・。
 もう、読むだけで嫌になる仕事内容。こんなんもんずっと続けてたらおかしくなるわなぁ~。と思ってたら、事件の裏から見えてくる人間の悪意にさらにどよーんとさせられました。物語の終わり方は結構好みだったなぁ。

『殺人工作』
 一人の女性が2つの死体を無理心中に見せかけようとするが、ささいなほころびに小林警部補は疑問を抱く・・・。
 途中まではまさに刑事コロンボを地で行くような展開。なのに終わってみるとそれもまた著者に引っ掛けだったのではないかと思うぐらいの展開。特に冒頭の一行の違和感がラストにつながってくる展開は、収録作の中で一番出来がいいと思います、

『あんたのせいよ』
 葉村を尋ねてきた知人・佳代子は、葉村にうんざりする頼み事をしていくが・・・。
 まさにタイトルどおりの考え方がうんざりするぐらいに漂っている。けどこれってついつい思っちゃうよな~、と身につまされる。意外な犯人にもビックリだけれども、その動機の方がなんともうんざりさせられてしまった。

『プレゼント』
 一年前、一人の女性が殺され、その命日に当時現場にいた人間が再び現場にあつまり真相を推理する。収録作の中では最もパズラー風味をだしているけど、人物造形が弱かったのか、意外性はあまりない。むしろある人物の正体の方が印象に残った。

『再生』
 一人の人物が密かな外出のアリバイ作りの為、何か起きたことが分かるようビデオを録画する。帰ってきた人物が再生したビデオに録画されていたのは。。。
 流石にこのネタについてはそのまま著者に騙される人はいないだろうな~。ただラストは予想外にユーモアテイストだった。

『トラブルメイカー』
 葉村晶と小林警部補が共演。事件を通して葉村の家族の確執が描かれているけれど、それにしてもすごい家族というかなんというか、特に三番目の姉のキャラクターが心底恐怖すぎる。悪意の無い悪意なのかもしれないけれども、もうなんか。。。


採点  ☆3.8