たったひとつの浦川氏の事件簿』(☆1.6) 著者:斎藤肇

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 岸岡という小さな町で殺人事件が起こった。
 町中がその話題で持ちきりとなってい たさなか、浦川はある少年にこう問いかけた。
「君さ、人を殺しただろ?」
 浦川は少年が記したネット掲示板のある書き込みをみてそう感じたのだという。
はたして少年はある人物をそそのかして殺人計画をたてていたのだが……。

「たったひとつの事件」から浦川氏のめぐる8つの〝限界推理〟。
読者へ「たったひとつの」注意事項 ――順番に読み進めていただくことをおすすめします。 つまり、たったひとつの事件、恥ずかしい事件、はじめての事件、壁の中の事件、どうでもよい事件、閉ざされた夜の事件、すれ違う世界の事件、浦川氏のための事件といったふうに。
とにかく多くは語れないへそまがり本格ミステリー。

原書房より

 12月に入って、忙しいんだか忙しくないんだか。最近あまり借りてなかった図書館本。ひとつにはネット予約のパスワードをすっかり忘れて使えなくなったのが原因だったけれども、やっとこさパスワードを更新。現在の出向先が図書館から歩いてすぐなので、よく考えたら便利なもんだ。

 ということで、今回は図書館で借りた本。実はこれを読み始めたのは、前回カーの記事よりも前。実は途中でリタイア気味になって、カーに手を出したのだ。普段ならカーに挫折して別の小説のパターンが多いんじゃないかと思うけど、それぐらい今回は強敵だった。

 基本的には短編集。粗筋のストーリーもその一遍。それぞれの短編で、少しずつタッチが変わっている。現実的なストーリーもあれば、非日常的、あるいはコメディ調のものもあったりするけれども、どれも根底に推理小説のアンチテーゼ的なものがある気がする。アンチといっても批判的という訳ではなく、むしろ推理小説的な手順を踏みながら、その推理の過程そのものが推理の為にあるかのような作りというか。
 今の時代、こんな方向性の作品は珍しくないけれども、この本が出たのが2001年。同じ年に出版されてるのが、殊能さんの『黒い仏』や舞城さんの『煙か土か食い物』、山田正紀さんの『ミステリ・オペラ』だったりするわけだから、ある意味その時流にあった作品なのかもしれない。

 ただ、個人的に強烈に読みにくかった。ストーリーそのものもどこに狙いがあるのかよく分からない短編も多かったし(中にはストーリーを理解するのを諦めたのも・・・)、文章的に確信犯なのかわからないけど、語り手が誰なのか混乱することもあったり。 
 最後の短編により、それまでの短編の繋がりが見えてくるんだけれども、いかんせん途中半分放棄気味の読書だったので、どこまで作者の狙いに気づけたかどうかも定かじゃない。
 もう、ここまでくると、文章の上手い下手以前に、完全に相性が悪かったとしかいいようがない。
 なので、個人の評価としてはすごく低くなるけれども、もしかしたら面白さに気づけなかっただけなのかもしれないなぁ。。。


採点  ☆1.6